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春爛漫大公演―「イ−ハト−ブ劇場」(全三幕)

2018/03/22 12:30/春爛漫大公演―「イ−ハト−ブ劇場」(全三幕)

 

 「一個の妖怪がヨ−ロッパを徘徊している――共産主義の妖怪が…」―。『共産党宣言』(序文)にならって言えば、「一個の(忖度という名の)妖怪が日本全国を徘徊している――全体主義の妖怪が…」とでもなろうか。しかもまるでパンデミック(感染爆発)みたいに…。官庁の中の官庁と言われる財務省の公文書「改ざん」事件が朝日新聞のスク−プによって、その氷山の一角が明らかにされつつある。かつて、同じ職場に身を置いた一人として、後輩たちの頑張りに敬意を表しつつ、足元への感染度合を検証するために一計を案じてみた。突破口は議員にとっての生命線―「質問権」である。花巻市議会3月定例会の予算特別委員会で繰り出した質問は全部で25項目。その質疑応答の中から垣間見えてきたのは、地方自治の大原則である「二元代表制」が無惨にも崩壊しつつある姿だった。「イ−ハト−ブ劇場」は3月22日、閉幕した。

 

 

【第一幕】〜「酒気帯び運転もご心配なく!?」

 

 花巻市は総務省が提唱する「地域おこし協力隊」の活用に積極的に取り組んできた。現在の隊員は10人で、ぶどう農家の支援(大迫町)などで大きな成果を上げている。応募条件の中で目を引くのが隊員に対する公用車の貸与。他の自治体でも同じような制度を導入しているが、当市の特長は私用に利用することも認めていることである。これに関連し、上田東一市長は同僚議員の一般質問にこう答弁した。「事故についても酒気帯び運転なども含めてすべて(市が加入する保険で)カバ−するので、ご心配はいらない」。一瞬、耳を疑った。言葉は政治家の命である。口にするのも憚(はばか)られるというのはこんな類(たぐい)の発言を指す。

 

 予算特別委員会(照井省三委員長=社民党系「平和環境社民クラブ」所属)に場を移したのを受け、私は問うた。「あえて酒気帯び運転に触れた真意がわからない。政治家として不適切な発言だと思う。撤回する用意はないか」―。撤回に応じる素振りを見せない上田市長に代わって、逆に私の質問を封じたのは照井委員長の方だった。いわく―「ここは予算審議の場。撤回を求めるのはふさわしくない」。予算執行の最高責任者の言質を問うた意味がこの委員長にはどうも理解できないらしい。私はすかさず挙手をした。「この種の発言を看過し、そのまま会議録に残すことは議会の品位にもかかわる。この場を借りて遺憾の意を表しておきたい」。公正中立を逸脱する委員長采配に一抹の不安を抱いたが、事態はより深刻な方向に進展していった。信じられないことが起こった。

 

 

【第2幕】〜「質疑妨害、そして証拠隠滅!?」」

 

 当市は平成30年度当初予算に「第3子以降保育料負担軽減事業」として、約3千8百万円を計上した。少子化対策に前向きに取り組む施策と評価したうえで、私はその政策形成過程をただした。「花巻市議会基本条例」はその13条で「議会は市長が提案する重要な政策について、その政策水準を高めることに資するため」―として”要とする背景、提案に至るまでの経緯、財源措置、ぞ来にわたるコスト計算など6項目の説明を求めることを定めている。この事業についての現場の事務事業評価(行政評価)にはこう書かれていた。「年齢制限の撤廃による対象範囲の拡大や補助率の拡充が考えられるが、どちらの場合も事業費が倍増することから、現在の市単独事業としての拡大は困難と考えられる」

 

 私は現場の認識と“政治判断“との調整…つまり予算編成のかなめの部分を問うたつもりだった。突然、後部の議席から怒声交じりの声が背中越しに聞こえてきた。一問一答形式の質疑の間に別の議員が割って入るのは余程の緊急事態以外には考えられない。よく聞き取れなかったが、「質問自体が予算審議になじまない」と主張しているらしかった。議事の混乱を避けるため、私は質問をいったん留保。休憩時間帯にこの間の経緯の説明を求めた。「動議と受け止め、発言を許可した」というのが照井委員長の言い分だった。議会事務局側に録音の再生を申し出てまた、腰を抜かしてしまった。その部分の発言は正式に委員長の許可を得ない、いわゆる「不規則」発言と判断し、録音していなかったことがわかった。

 

 つまりはこういうことである。不規則発言によって、私の質問が妨害されたうえ、その証拠となる録音記録も存在しないという摩訶不思議な出来事が起きていたのである。事務局側の録音停止の判断に疑義を差しはさむものではない。それにしても、まるで阿吽(あうん)の呼吸でも図ったみたいなこの“偶然の一致”…。お見事と言うしかない。

 

 それにしても、何とも既視感のある光景ではないか―。現在に至るまで国政を揺るがしている「森友・加計」問題……「あったこと」が「なかったこと」にされ、目の前では公文書が改ざんざれるという前代未聞の不祥事が連日のように報道されている。その正体こそが「忖度(そんたく)という名の妖怪」に他ならない。中央―地方を問わず、その背後にうごめくのは「一強」をほしいままにする“権力”の存在である。二元代表制の行司役であるべきはずの予算委員長がそのボディガ−ドになり下がった構図がすかし絵のように浮かび上がった。太鼓持ち、茶坊主、腰ぎんちゃく、幇間(ほうかん)、佞臣(ねいしん)…。こんな言葉が浮かんでは消えた。

 

 

【第三幕】〜「誤解は招くが、『不適切』ではない!?」

 

 当市中心部の国道沿いに「景観」を損(そこ)ないかねない空間が放置されたままになっている。かつて、漢字テレププリンタ−などの生産で戦後花巻の復興に貢献した「新興製作所」跡地である。3年前に仙台市内の不動産業者が取得し、建物の解体工事は終了したものの、コンクリ−トガラや残土などは未撤去のまま。請負業者と代金の支払いをめぐって裁判沙汰になった末、当該地が競売にかけられるなど今後の展開は不透明の状態が続いている。この件について、同僚議員が一般質問で「景観から受けるマイナスイメ−ジ」という観点から対応をただしたのに対し、上田市長は以下のように答弁した。

 

 「建物内に存在したアスベスト除去は完了しており、最大の健康被害の心配はなくなった。とりあえず、この段階に至っただけでもまだマシだ。コンクリ−トガラの撤去など今後の景観保全については第一義的には土地所有者の責任に帰す。もし、市側が撤去するとすれば、1億5千万円以上の経費がかかる。これだけ莫大な経費を税金で賄うのはいかがなものか。税金投入の是非については最終的には議員の判断にゆだねられるが、今後も進展が見込まれない限り、新興跡地の景観保全にかかわる質問はもうしないでほしい」―。同僚議員がこの市長答弁に対し、「質問権」の侵害という立場から異議申し立てを行い、後日の議会運営委員会で協議することになった。

 

 花巻市まちづくり総合計画「第2期中期プラン」(平成29年〜31年度)の中には市街地再生の重点戦略として「景観形成の推進」があげられ、地域との協働による良好な景観の保全を謳(うた)っている。私はこのプランを根拠にその取り組みについてただそうとした。と、今度は二元代表制の一方の当事者である上田市長が「予算審議に関係はあるのか」と口出しをした。この手の横やりはいまに始まったことではない。私は当局と議会双方による理不尽な質問封じに対し、気色ばんで反論した。担当部長が手を挙げたのはしばらくたってからである。ボソボソと蚊の鳴くような声でつぶやいた。「当初予算には景観保全にかかわる経費は計上していません」。都合の悪い質問には口をふさぎ、議会側がそれをバックアップするという曲芸技である。

 

 「確かに誤解を招くような発言だったが、前後の文脈から読み解くと必ずしも『不適切』とまでは言えない」―。予算特別委員会最終日の16日に開かれた議会運営委員会(中村初彦委員長ら7人)は結果として、上田市長の質問権の侵害を“免罪”する決定を賛成多数で可決した。反対したのはわずか2人だけ。議員にとって“命綱”ともいえる質問権は当の議員たちによって葬り去られた。「自殺行為」とはこのことである。

 

 

【公演を終えるにあたって】

 

 

 永田町界隈で飛び交っている「一部の職員」という語法が気にかかる。「森友」問題に関連し、「常識が壊れた」という遺書を残して自殺した職員はさらにその末端に位置する職員だった。私にも思い当たるふしがある。上田市長が新興跡地の保存や保全を訴えてきた議員を「一部の議員」と切って捨てたことがあったからである。一世を風靡(ふうび)し、もはや忘れ去られてしまった感がある、例の「排除」(小池都知事)の論理である。もっとも「忖度」と「排除」とはコインの裏表の関係にあることに変わりはない。そもそも、花巻市議会に「二元代表制」を求めること自体が幻想だったことに、今さらながら気がついた。不徳のいたすところである。

 

 「忖度」を拒絶し、文部科学省を追われた前川喜平・前事務次官に対するバッシングが続いている。前次官が天下り問題にかかわって辞職したことや出会い系バ―を利用していたことなどを指摘し、文科省が講演先の中学校に対し、講演内容の提示を求めていることが明らかになった。双方の間を国会議員が取り持った結果、忖度によって教育の中立性が侵害される事態となった。かつての“検閲”を彷彿(ほうふつ)させるに十分である。「忖度の先にあったのは“集団リンチ”だった」―こんな光景がふいに目の前に広がった。私自身、「イ−ハト−ブ劇場」の役回りを演じながら、そのことをいやというほど思い知らされたからである。

 

 英国人作家、ジョ−ジ・オ−ウエルの代表作『1984』の中で描かれる独裁国家(ビッグ・ブラザ−)には平和、豊富、真理、愛情の4省が置かれている。「真理省」は歴史記録や公文書の改ざん、架空の人物のでっち上げ、「愛情省」は反体制分子に対する尋問や拷問、処刑などを主要な任務にしていた。皮肉にもそのディストピア(暗黒郷)が海を飛び越えて、日本に出現したということなのか。今年の流行語大賞には昨年の「忖度」に続いて、「改ざん」が有力候補になるらしい。「SONTAKU」はもはや世界共通語として定着している。民主主義の根幹が全国津々浦々で音を立てて崩れ落ちようとしている。この国を根っこで支えてきた「理非曲直」…つまり、物ごとの分別が腐臭を放っている。

 

 

(写真は3月定例会で質問に立つ筆者。質問権は議員にとっての生命線であり、二元代表制を守備する最前線に位置する=3月8日、花巻市議会議場で)

 

 

《注》〜二元代表制(憲法第93条)

 「議会の議員」と「市長」を市民が直接選挙で選ぶ制度のことで、「議院内閣制」の国会で国会議員が総理大臣を選んでいることと違い、どちらも市民の代表であることから、議会と市長は対等の機関として、お互いに抑制、協力することで緊張感を保ちながら自治体の運営に取り組む制度のこと。(平成22年6月制定の「花巻市議会基本条例」説明文より)

 

 

《ブログ再開のお知らせ》

 

 妻の病状が安定したため、3月22日からブログを再開します。約1か月間の休載でしたが、国の内外には風雲急を告げる出来事が相次いでいます。わが足元も例外ではありません。一刻の猶予も許されないという切羽詰まった気持ちです。掲載間隔が少し長くなると思いますが、以前にも増したご愛顧、ご叱正をよろしくお願い申し上げます。ニッポン沈没の危機を実感させられる毎日です。

 

 

 

 

2018/03/22 12:30
イーハトーブ通信|花巻市議会議員 増子義久

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