「強い意見やビラ配りをする市民だけでなく、こうした人たちに気圧(けお)されて発言できなかった人もいたと聞いている。より幅広い意見を吸い上げたい」―。新花巻図書館の立地に関連した上田東一市長の答弁に思わず、耳を疑った。5日開会した花巻市議会12月定例会で、一般質問に立った伊藤盛幸議員(はなまき市民クラブ)が市民説明会の集約についてただした際、冒頭発言が飛び出した。このビッグプロジェクトをめぐる市民説明会は10月11日から市内各地域で17回(うちオンライン2回)行われた。225人の参加者のうち、旧花巻病院跡地への立地を望んだのが32人だったのに対し、市側が第1候補に挙げたJR花巻駅前のスポ−ツ用品店を望んだのは18人(いずれも発言実数)だったことが初めて明らかにされた。
上田市長はこの数字について、さらに「各種関係団体や高校生を対象とした説明会を続行中であり、最終的にはその結果を見たい。とくに若い世代には駅前立地を希望する声が多いのも事実であり、JR側との用地譲渡交渉を先行したい」と強弁した。一体、何のための市民説明会だったのか。自由参加を原則とする“市民参画”が骨抜きされる目の前の光景が遠い記憶を呼び戻した。
「声なき国民の声に我々が謙虚に耳を傾けて、日本の民主政治の将来を考えて処置すべきことが私は首相に課せられているいちばん大きな責任だと思ってます。今は『声ある声』だけです」―。「60年安保」(1960年)の政治動乱の時、当時の岸信介首相は安保反対運動に参加していない国民が多数派であり、彼らを“声なき声”と表現し、安保反対運動支持は少数派と述べた。上田発言を聞きながら、妙に合点がいったのだった。「“強い意見”(声ある声)の持主とは多分、私のような市民を想定しているのだろうな」―と
「郷土の詩人、宮沢賢治が学んだ現花巻小学校とシニアの学びの場である『まなび学園』(生涯学習都市会館)に挟まれたこのロケ−ションこそが『文教地区』にふさわしいと考えます」―。市民説明会初日(笹間振興センタ−)、私は病院跡地への立地を求める「公開質問状」を読み上げた(10月11日付当ブロブ参照)。思いのたけを込めた必死の訴えのつもりだった。しかし、上田市長の手にかかれば、私を含めた32人は「強い意見やビラ配りをする」少数者ということになるようである。
伊藤議員は食い下がった。「市民の総意を見極めるためにはアンケ−ト調査も必要。市民説明会の際になぜ、それを実施しなかったのか。病院跡地はすでに市側が購入することが決まっている。もう、立地場所をここに決断すべき時ではないか」―。「今回の数字だけで判断するのはいかがなものか」と上田市長は切って捨てた。この人にとって、いわゆる“民意”とは恣意的に作り上げるものなのかもしれないと、ふと思った。岸元首相のひそみにならい、上田市長は駅前立地に賛成する“声なき声”が多数を占めるまで“声集め”を続けるつもりなのだろう。
岸元首相の発言に反発した市民は当時「声なき声の会」を結成し、のちの市民運動の母体となったことを思い出した。上田流とはもはや、政策以前の“世論操作”としか呼びようがない。ある種の「言論封殺」いや、“言論テロ”!?あな、恐ろしや…
(写真は鋭い舌鋒で市側を追及する伊藤議員=12月5日午前、花巻市議会議場で)
《追記》〜「市民による辛口採点大会」へのご案内
12月5日から7日まで、行われる花巻市議会12月定例会の一般質問を対象にした「市民による辛口採点大会」(「花巻市民の権利を守る会」主催)への入場は下記から。フォ−ムの開設は2月5日午前10時から同15日正午まで。質問一覧は11月29日付当ブログを参照ください。
なお、上田流「民意」づくりの手法については、11月24日付当ブログ「今度はアンケート”捏造”疑惑」を参照のこと