「修正動議には反対していただきたい」―。開会中の花巻市議会9月定例会で上田東一市長の口から“議会軽視”もここに極まれりとも受け取られかねない”暴言”が飛び出した。この10月から実施される「幼児教育・保育」無償化に伴い、一部で副食費が増加するケ−スがあることから、同市では17日開会の本会議にその負担を軽減するための改正条例案を提出。これに対し、共産党市議団から「全額無償化」を求める修正動議が出されたが、賛成少数で否決され、原案通りに可決された。冒頭の発言はこの動議への対応を問われた際の上田市長の答弁である。アッと驚く”暴言”劇はこんな経緯をたどった。共産党市議団が議席をドンと叩いて、怒りをあらわにした気持ちもよくわかる。
この修正動議に対して、ある議員が「当局としてはどう対応するのか」とただした。答弁に立った上田市長は「ぜひ、当局案に賛成していただきたい」―。ここまではOK、というよりも提案者のだから、当たり前のことである。しかし、そのあとがOUT。「この際、修正動議には反対していただきたい」―。これはもう「議会軽視・議会介入」のお手本みたいなものである。最高学府で法律を修めたというこの人にとっては、「口が滑った」ではすまされない『暴言』そのものである。というよりも、上から目線の確信犯的な振る舞いだと言わざるを得ない。なぜなら、私自身が議員在職中に何度もその“被害”にあっているからである。あの時の光景を私はまざまざと思い出す。2年前の予算特別委員会で上田市長は傲然(ごうぜん)とこう言い放ったのだった。
「同じ趣旨の質問はすでに、他の議員がしている。(増子)委員がちゃんと聞いていたのかどうか(まるで私が居眠りでもしていたような口ぶりだった)…。この質問についてはその時に詳細に説明している。質問をするなら、その内容を受けた形にしてほしい。そうすれば時間も効率的に使える」―。私はその時、独立行政法人「都市再生機構」(UR都市機構)に対し、新図書館構想の立地調査などを委託した点についてただした。答弁内容にわが耳を疑った。「質問権は議員に与えられた大切な使命。内容も質問者によって、思いも視点も違う。予算審査に対する露骨な干渉だ」と抗議したが、大原健委員長(当時)は柳に風と受け流し、何ごともなかったかのように委員会は幕を閉じた。委員会終了後、小原雅道議長に対し「この市長答弁は議会全体に対する冒涜(ぼうとく)だ」として、厳重注意するよう申し入れたが、これもそれっきりで時は経過した。
さて、さて……。今回、小原議長はまるで生まれ変わったかのように、厳しい口調でこう言った。「当局側はこの場に説明員の立場で出席している。だから、議員発言とは違って、会議録からの削除はできない。しかし、今回の市長発言は議会の側としては看過できない。今後、注意してほしい」―。議場は一瞬、ざわついた。私が“被害”にあった際は見て見ぬふりを決め込んだ小原議長にしては珍しい。議長席から見たその横柄な振る舞いがさすがに許せなかったのかもしれない。議会の憲法とも呼ばれる「議会基本条例」はこう定めている。
「花巻市議会は、二元代表制のもと、市長とともに市民の信託を受けた市の代表機関である。議会は多人数による合議制の機関として、市長は独任制の機関として、それぞれの異なる特性を生かし、市民の意思を市政に的確に反映させるために競い、協力し合いながら、市としての最高の意思決定を導く共通の使命が課せられている」―。上田ワンマン市政は議会さえも「私物化」しかねないほどに腐敗し、権勢をほしいままにしつつある。今回、議会側がそれに「待った」をかけたという意味では一歩前進である。議員諸賢の奮起に期待する以外にない。12日付当ブログ(「花巻まつりと”政教分離”―そして十五夜」)で上田市長の「違憲」疑惑に触れたばかりなのに、「どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ」(軍歌「討匪行(とうひこう)」)……
ファシズムの足音が聞こえてくる。あな、恐ろしや!?
(写真は無投票で2期目の再選を決めた上田市長(左から2人目)=2018年1月21日、インタ−ネット上に公開の写真から)