「ツイッタ−やフェイスブックなどのSNS(ソ−シャル・ネットワ−キング・サ−ビス)が身近な存在になった今こそ、これを駆使して直接、上田(東一)市長へ抗議の声を届けよう」―。約100人の参加者でふくれあがった会場は異様な熱気に包まれた。「新花巻図書館を考える会」(山下牧子代表)が22日に開いたパネルディスカッション「新花巻図書館に望む」では、賃貸住宅付き図書館という市側の「新図書館」構想に対し、反対の意見が相次ぎ、今後はこの構想自体の撤回を求める署名運動を展開することで全会が一致した。
この日は元小学校長の佐々木信一郎さん、元高校教員の伊藤昇さん、主婦の吉田桂子さん、保育士の高橋静子さんの4人がパネラ−として、登壇した。「(宮沢)賢治のまちにふさわしい図書館を」、「豊かな自然に恵まれた場所に立地を」、「とくに子どもにとっては、本こそが心を育てる」、また障がいがある子どもさんの親である吉田さんは「誰にでも平等に解放された図書館をつくっていこう」…などとそれぞれの立場から意見表明した。
「考える会」では独自に住民アンケ−ト調査も実施。250人から回答を得た結果、6割以上(64%)の160人が「図書館の単独整備」を求め、立地場所についても半数以上(56・8%)の142人が「生涯学園都市会館(まなび学園)周辺」とし、市側が公表した「JR花巻駅前のスポ−ツ店」に賛成したのは34人(13・6%)に止まっている。一方、市議会側が8月に実施した意見交換会でのアンケ−ト調査でも「単独整備」が53・8%、「まなび学園周辺」が60・4%とほぼ同じ傾向を示した。なお、山下さんが今年2月に提出した「単独整備」を求める陳情は現在、市議会で継続審査になっている。
質疑の中で私は最近、繰り返している“持論”をこう強調した。「いわゆる反対論の中には無意識のうちに、建物(箱もの)の構造や建設場所などの是非に論議が傾いてしまう危険がある。そうではなく、コロナ禍という未知の脅威のただ中に生きざるを得なくなった今、市側が主張するコンパクトシティづくり(賑わい創出)、つまり上田市政が依拠する「立地適正化計画」そのものが今後、予想されるパラダイムシフト(価値の大転換)の時代には立ちいかなくなる可能性がある。たとえば、マスクの着用や三密の防止、テレワーク導入の加速化、ソ−シャルディスタンスの確保などはそう気が付かないままにすでに、私たちに行動変容をもたらしている。いま必要なのは発想自体の根本的な転換。当市はその意味で、すんでのところで“滑りこみセ−フ”だった。なぜなら、まだ建設前の構想段階だったから。この際、すべてをいったんご破算にして、ゼロベ−スから図書館論議を積み重ねるべきではないか」―
何人かがうなずいてくれたが、果たして私の真意がどこまで分かってもらえたであろうか!?図書館の未来の在るべき姿を考えることを通じて、逆に人類が初めて経験した今回のコロナパンデミックとは一体、何であるのか―ということに想像力の射程を伸ばしたいという私の「真意」を……。こうした思惟的営為こそが、”知の殿堂”とも言われる図書館論議にふさわしいのではないかと考えるのである。
(写真は図書館への関心の高さを現したパネルディスカッションの会場=9月22日午後、花巻市四日町の花北振興センタ−で)