「活気呼ぶ新図書館に」、「『花巻』発信の場に」―。7日付の地元紙(「岩手日報」と「岩手日日新聞」)にこんな見出しの記事が載った。県立花巻北高校(川村俊彦校長、677人)の生徒有志が喫緊(きっきん)の課題である「新花巻図書館」の立地場所として、80%以上が「JR花巻駅前」を希望しているというアンケ−ト調査の結果を上田東一市長に報告。「楽しい提案を受けた。こんな図書館ができればよい」などと応じたという内容だった。高校生たちの関心が高いことに意を強くしたが、「裏で一部の市議が糸を引いているらしい」という嫌なうわさが聞こえてきた。
議会側が設置した「新花巻図書館整備特別委員会」(伊藤盛幸委員長)によると、特別委小委員会の委員である大原健議員(無所属)から先月、「市内の全高校生を対象にした図書館アンケ−トを実施すべきではないか」という提案があった。特別委としては「市当局が主催するワ−クショップにも高校生や若者世代が参加している。個人の(政治)活動に口をはさむことはできないが、特別委の総意としての実施はしない」―ということで決着がついていたという。ところが、この日の新聞報道は当の特別委のメンバ−たちにも寝耳に水の出来事。「特別委の討議資料として提出するのならまだしも、独断でやったアンケ−トが一方的に公表されるとは…。世論誘導と誤解されかねない」と伊藤委員長は憤慨する。市民の間には「高校生の純粋な気持ちを悪用した卑怯なやり方。許せない」という声も上がっている。
今回の経緯について、市川清志・生涯学習部長はこう話す。「議員活動に関することなのでコメントは避けたいが、10月中旬に大原議員と公明党所属の議員2人が立地場所についての当局側資料を基に10人ほどの生徒と意見交換したと聞いている。これがきっかけとなって、全生徒を対象としたアンケ−トにつながったのではないか。参考にはするが、これによって今後の方向性が変わるということはない。ただ、こうした報道を市民の側がどう受け止めるのか…」―。新聞報道によれば、533人(78・7%)が回答し、うち86%が「駅前立地」に賛成したという。ちなみに、議会側が実施したアンケート調査(回答数91人)では逆に「駅前立地」に賛成したのは約15%に止まった一方で、「まなび学園周辺」が約60%にのぼった。
高校生との意見交換に臨んだ大原議員は「賃貸住宅付き図書館」の駅前立地(いわゆる、“上田私案”)を一貫して支持してきたひとりだが、その立ち位置には疑問符がついて回ってきた。「法令に規定されているものを除き、各種委員会、審議会等の委員には議員は選出しないこと」―。花巻市議会先例集にはこうした申し合わせ事項がある。大原議員はこの先例集を無視する形で、新花巻図書館問題などを審議する「花巻市社会教育委員会議」の委員にも名前を連ねている。会議のたびに、小委員会委員(議会)の立場に身を置いたと思ったら、今度は社会教育委員会議(審議会)の席にちゃっかりと座っていたり…。今年2月に開催された同会議(議長=石橋恕篤・富士大学教授、委員20人)では「商業施設的なイメ−ジをあわせ持つ“こじゃれ”な図書館をつくっていただいきたい」と当局側の提灯(ちょうちん)をかついでいた。この節操のなさよ!?
さらには、“上田私案”の肩を持ったつもりなのか、「(新図書館の)周辺広場を芝生化するということだが、祭りの山車の運行によって、芝が傷つく心配はないか」(3月定例会での一般質問)などとトンチンカンな質問をする始末。ことあるごとに「火に油を注ぐ」”問題議員”として、周囲から鼻つまみにされていることに、当のご本人は気が付いている気配がないのだから、始末に負えない。“二股膏薬”的なこの振る舞いには「“利益相反”とさえ受け取られかねない。議員の品位が疑われる」と眉をひそめる同僚議員も多い。伊藤委員長は「現在、特別委では真剣勝負の議論が続けられている。今回の独断専行を看過するわけにはいかない。本人から事情を聞きたい」と話している。
(写真は上田市長(左)と藤原忠雅・副市長の前で、アンケ−ト調査の結果について報告する高校生=11月5日、花巻市市長室で。大原議員のフェイスブックから)