土砂降りの雨の中、スリップに気を付けながら、駆けつけた先の会議会場は照明が消され、真っ暗闇。「コロナで急きょ、延期になりました」と担当者。この日、午後2時から予定されていた社会教育委員会議では喫緊の課題である「新花巻図書館」問題が審議されることになっていたのだが…。市庁舎3階の議会事務局前のソファにへたり込んでいると、議会側の図書館特別委の伊藤盛幸委員長と佐藤峰樹副委員長の姿が。「あなた方も傍聴に」と声をかけると、苦笑いしながら首をタテに振った。コロナ陽性第1号の発生に伴い、当事者である委員本人への会議延期の通知は怠らなかったものの、議会側への連絡とHPへの掲載を失念したらしい。現場職員を責めるつもりは毛頭ないが、上田(東一)市政の様子が最近、とみに変なのだ。
コロナ感染の第一報(18日)を受けた市当局の対応はすばやかった。翌19日には市長自らのビデオメッセ−ジを配信し、この日20日には市の関連施設の利用制限(21日から今月いっぱい)をHP上に公表するとともに、この日に上京予定だった「市長日程」の変更もいち早く告知した。肩透かしを食ったのは何も知らされずにノコノコ出かけた私たち傍聴者だったというわけである。つい1週間ほど前の今月12日、図書館特別委の冒頭、上田市長が深々と議員の前に頭を下げる一幕があった。初めて見る光景だった。しかし、陳謝した一件は介護保険の過大給付について、会計検査院から指摘されたことに対する「おわび」だった。それどころか、同じ場で上田市長はこんなことを口走った。
「(新図書館の整備委託で)大変、お世話になった岡崎さん(紫波町の「オガ−ル・プロジェクト」の岡崎正信社長)に対し、議会側や一部の市民の間で、個人攻撃があったと聞いている。この場を借りて、岡崎さんに謝罪したい」―。私はまじまじと上田市長の顔を見つめ直した。岡崎さんは新花巻図書館構想の土台となった「住宅付き」図書館(いわゆる“上田私案”)について、市民や議会側の頭越しにいきなり、首相直属の「まち・ひと・しごと創生会議」で公表するという“越権行為”を犯し、私も議会側もそのことの非をただしたのだった。この“信義”違反を黙認した上田市長が頭を下げるべきはまず、市民や議会側に対してではなかったのか。
今に始まったことではないが、上田市長のこうした「市民目線」の欠落を私は以前から、危惧してきた。岡崎さんに丸投げした「住宅付き」図書館構想そのものが市民の総スカンを食らって、撤回に追い込まれざるを得なかったという政治責任について、この人はどう考えているのだろうか。そんなことはあるまいと思うが、今回の“コロナパニック”がきっかけとなり、現場の第一線までもがこの「上から目線」―つまり”ウエダパンデミック”に巻き込まれないことを切に願いたい。ヘトヘトになって家に戻ったら、遅ればせながら会議の延期がHPにアップされていた。
(陳謝すべきは「新花巻図書館」問題の“不手際”に対してではないのか。普通の感覚ではそう考えると思うのだが…=11月12日、花巻市議会委員会室で)