「ドイツ軍の命令で穴まで掘らされて。ご覧なさい。ひまわりやどの木の下にも麦畑にもイタリア兵やロシアの捕虜が…」―。ウクライナを舞台にした映画「ひまわり」(ヴィットリオ・デ・シ−カ監督、1970年)のチャリテイ上映に足を運んだ(3月26日、フォ−ラム盛岡)。ソフィア・ロ−レンが主演したあまりにも有名な名作。第2次世界大戦で引き裂かれた夫婦の悲劇が目の前のウクライナの光景にそのまま重なった。そして、ヘンリ−・マンシ−ニによる哀愁がこもった主題歌の背後にチェルノブイリ原発の建屋が浮かび上がった。と、これまではそう思っていた。
「メルトダウン」(炉心溶融)という過酷事故(1986年4月、旧ソ連邦・ウクライナ)を引き起こしたこの原発は映画が公開された同じ年に着工され、第1号機が稼働したのは7年後。だから、私の勘違いだったことが今回、判明。実はモスクワ近郊の火力発電所の冷却塔だったことを知った。では私が以前、画面に見たものは何だったのか。やはり、“チェルノブイリ”の幻視あるいは予知みたいなものではなかったのか。現にこの原発はいま、ロシア軍の掌握下にあるではないか。そして、プ−チンは核や化学兵器の使用までほのめかしている。歴史の「悪夢」は繰り返されるのか。ひまわりはウクライナの国花である。
「放射性大気汚染のレベルが上昇している」―。今度はこんなニュースが飛び込んできた。ロシア軍の砲撃によるものと思われる森林火災の影響で、原発周辺の放射能漏れの恐れも出てきた。記憶がまた、呼び戻された。スクリーンに映し出された、雪原の荒野を敗走する兵士たちの姿に父の死が重なった。先の大戦でソ連軍(当時)の捕虜となり、シベリアの大地に没した、その父の死である。これは”幻視”ではない。けれども、ロシア側から栄養失調死に至るカルテや死亡証書、埋葬証書が届いたのは戦後71年がたってからだった。
(写真は映画に登場する火力発電所の建屋や煙突=インタ−ネット上に公開の写真から)
《追記》〜遅ればせながら…。市がウクライナ支援のふるさと納税の募集へ
花巻市は29日、ウクライナの人道支援のため「イ−ハト−ブ花巻応援基金」(ふるさと納税)を通じた寄付金を募ることをHP上に告知した。期間は4月30日午後11時59分までで、一口2000円。寄付金は日本赤十字社の「人道危機救援金」に当てられる。今次のウクライナ危機をめぐっては市議会側が3月4日付で抗議決議を可決、議会として直接支援金を送ることを決めている。基金名の「イ−ハト−ブ」は郷土の詩人、宮沢賢治が平和を願って命名したエスペラント語で「理想郷」を意味している。他に先んじて、支援の声を上げるべきではなかったかという市民が多かった。