「苑長!苑長!!苑長〜っ!!!」―。のぶ君やてる君が一斉にそう叫びながら、飛び出してきた。みきちゃんやきくよちゃんの姿も…。私は以前、この施設の施設長だった。あれから12年。みんな同じ年かさを重ねたが、今も「苑長」と呼んでくれている。私は不覚にもボロボロと涙をこぼしてしまった。
この日、私は花巻南温泉郷の入り口に当たる障がい福祉サ−ビス事業所「こぶし苑」の前で、マイクを握っていた。新聞社を退社後、この福祉の現場に飛び込んだのは18年前の平成16年3月。6年あまり、福祉という未知の分野で新しい体験をした後、平成22年7月、「アラセブ(70歳)、最後の決断」―を掲げて市議に初当選。2期目は「アラセブ、再度の決断」と看板を塗り替えて再選された。このノボリを作ってくれたのは施設の印刷班のみんなだった。敷地内には私が在職中に建設したパン工房「銀の鳩」が健在だった。走馬灯のように当時の思い出が去来した。
「叛逆老人は死なず」―。今回のノボリもここのみんなで印刷してもらった。のぶ君が突然、怒鳴るような声で言った。「オラも父さんも苑長に入れることにしている。んだども、選挙って、必ず当選するとは限らないべ。落ちたら、また苑長として戻ってくればいい。おらはそっちの方がうれしい。だって苑長はずっと、死なないんだから」…。涙が今度はしずくとなって頬を流れ落ちた。
(写真は自分たちが作ったノボリを握り、リ−フレットを手に記念撮影に収まる利用者のみんな=4月20日、こぶし苑の前の広場で)