「不採択にする理由が見当たらない」―。花巻市議会3月定例会に提出していた「議会の活性化」を求める陳情(2月9日付当ブログに陳情書の全文)の審査が13日開会の議会運営委委員会(佐藤峰樹委員長ら8人)で行われ、賛成4VS反対3の僅差で採択された。参考人として出席した私はむしろ、不採択を主張した委員が3人もいたことに当議会の機能不全ぶりを見た思いがした。迷走を続ける新花巻図書館やJR花巻駅橋上化(東西自由通路)などの懸案について、合意形成に向けて議員間で討議を尽くすべきではないか―「花巻市議会基本条例」(2010年6月制定)に規定する「自由討議による合意形成」(第16条)を求める陳情趣旨の冒頭、私は条例の前文をあえて引用した。
「地方分権の時代にあって、自治体の自主的な意思決定と責任の範囲が拡大した今日、議会の果たすべき役割は確実に増してきており、自治体政策を審議する場合において、その論点、争点を市民に明らかにし、持てる権能を十分に駆使し、議決機関としての責務を果たさなければならない。このような使命を達成するため、議会は主権者である市民の代表機関であることを常に自覚し、市民との関係、市長その他の執行機関との関係、議会の活動原則及び議員の活動原則等を定め、市民の信託に全力で応えていくことを決意し、議会の最高規範としてこの条例を制定する」
これに対し、たとえば新図書館問題については「全議員で組織した『新花巻図書館整備特別委員会』で議論を尽くしたと思っている。この時点で合意形成はできているのではないか」(高橋修議員、明和会)などと不採択の理由を述べた。一方当時、特別委員会の委員長だった伊藤盛幸議員(はなまき市民クラブ)はこう反論した。「当委員会は2年以上も前に解散され、その後、立地場所の有力候補地として花巻病院跡地が浮上するなど立地環境が一変した。市側が第1候補に挙げるJR花巻駅前の土地譲渡交渉も遅々として進まず、市民の間には先行きに不安を訴える声も大きい。だからこそ、条例の理念にのっとり、問題点を整理して市民に示すのが議会の責務ではないか」
「議会基本条例」は議会側が自らを律するために自らが定めた「最高規範」―言ってみれば「憲法」にも相当する。その憲法第99条は議員も含めたすべての公務員に対して「遵守義務」を課している。そもそも、「お願いですから、その“憲法”を守ってください」という陳情を出させる側の倒錯ぶりにこそ、仰天すべきである。市長与党を自認する「明和会」(自民党系、8人)は最初から「員数外」としても、”護憲”政党・社民党傘下の「社民クラブ」(3人)がその戦列に名を連ねていることは、“イ−ハト−ブ”議会の七不思議のひとつとして記憶にとどめておきたい。なお、同会派に籍を置く照井省三議員は上田東一市長の後援会事務局長の肩書を持っているが、そのことを恬(てん)として恥じる気配は全く感じられない。
以下に今回の陳情審査の賛否者(委員長を除く)の氏名を記す(敬称略)
不採択者〜高橋修、横田忍(明和会)、若柳良明(社民クラブ)
採択者〜伊藤盛幸、佐藤現、羽山るみ子(はなまき市民クラブ、7人)、櫻井肇(日本共産党花巻市議会議員団、3人)
(写真は4人の挙手で陳情が辛うじて採択された瞬間=3月13日午後、花巻市議会委員会室で)
《追記》〜”護憲”作家の大江健三郎さんが死去
ノ−ベル文学賞を受賞した作家で、護憲の立場から言論活動を展開した大江健三郎さんが3日未明、老衰のため死去した。88歳。講談社が13日午後、発表した。同社によると、大江さんは愛媛県生まれ。1958年、23歳のときに「飼育」で芥川賞を受賞するなど数々の文学賞を受賞し、94年にはノ−ベル文学賞を受賞した。68年の川端康成に次いで日本人として2人目だった。2004年には「九条の会」、福島第一原発事故後には脱原発を訴える「さようなら原発1000万人アクション」の呼びかけ人の一人となり、集会やデモなどで活動してきた(13日付「東京新聞」デジタル版)