今から128年前の『群衆心理』で心理学者としての名声を不動のものとしたフランス人、ギュスタ−ヴ・ル・ボン(1841〜1931年)は自著の中で「群衆とは、その構成員すべてが意識的人格を完全に喪失し、操縦者の断言・反復・感染による暗示のままに行動するような集合体である」と述べている。普仏戦争の際は軍医として、ストレスを抱える軍人の行動を観察するなどその幅広い視野は社会学や物理学の分野にまで及んだ。ル・ボンが“群衆心理”と名づけた時代の空気はまさに日本の、そして足元(イ−ハト−ブ)の「今」を照射して余すところがない。公開されているある市民ブログ(「浜名史学」)に「ル・ボン」語録が紹介されていたので、以下にその一部を転載させていただく。
●集団的精神の中に入り込めば、人々の知能、したがって彼らの個性は消え失せる。異質的なものが同質的なもののなかに埋没してしまう。そして、無意識的性質が支配的になるのである
●群衆はいわば智慧ではなく凡庸さを積み重ねるのだ
●群衆においては、どんな感情もどんな行為も感染しやすい。個人が集団の利益のためには自身の利益をも実に無造作に犠牲にしてしまうほど、感染しやすいのである
●孤立していた時には、おそらく教養のある人であったろうが、群衆に加わると、本能的な人間、したがって野蛮人と化してしまうのだ
●単独の個人は、自己の反射作用を制御する能力を持っているが、群衆はこの能力を欠いている
●群衆は、思考力を持たないのと同様に、持続的な意志をも持ちえないのである
●群衆の中に入れば、愚か者も無学者も妬み深い人間も、おのれの無能無力の感じを脱し、その感じに取って代わるのが、一時的ではあるが絶大な暴力の観念なのである
●群衆は、弱い権力には常に反抗しようとしているが、強い権力の前では卑屈に屈服する
●思想は、極めて単純な形式を帯びたのちでなければ、群衆に受け入れられないのであるから、思想が一般に流布するようになるには、しばしば最も徹底的な変貌を受けねばならないのである
●群衆が、正しく推理する能力を持たないために、およそ批判精神を欠き、つまり真偽を弁別し、的確な判断をくだす能力を欠いていることは、付け加えるまでもない
●群衆は、熟考と推理の能力を欠いているために、真実らしくないことを弁別することができないのである
●民衆の想像力を動かすのは、事実そのものではなくて、その事実のあらわれ方なのである。それらの事実が、こう言っていいならば、いわば凝縮して、人心を満たし、それにつきまとうほどの切実な心象を生じねばならない。群衆の想像力を刺激する術を心得ることは、群衆を支配する術を心得ることである
《追記ー1》〜二元代表制のもうひとつの姿(その1)…「イ−ハト−ブはなまき」との雲泥の差!!??
「議会の請願採択を重く受け止めながらも対馬の将来に向けて熟慮した結果、文献調査を受け入れないとの判断に至った」―。原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、長崎県対馬市の比田勝(ひたかつ)尚喜市長は27日の市議会本会議で、第1段階の文献調査の受け入れをしないと表明した。議場で見守っていた反対派の市民からは喜びの声が上がる一方、推進派市議は、口を真一文字に結んで厳しい表情を見せた。
本会議場の傍聴席約40席は駆けつけた市民らで埋まり、関心の高さがうかがわれた。午前10時半前の開会から2時間近くが経過し、本会議の終盤に市長が壇上に立って「受け入れ反対」を表明すると、傍聴していた市民から「お−」という声が上がり拍手が起きた。市議会は今月12日に調査受け入れを求める請願を賛成多数(10対8)で採択したが、市長と意見が割れることになり、議場の推進派市議からは落胆の声が漏れた。議会後、反対署名を集めた市民団体「核のごみと対馬を考える会」のメンバ−は「核のごみ!! 比田勝市長 反対!!表明」と書かれた手作りの号外約50枚を議会周辺で配布し、通行人にアピールした。比田勝市長は記者会見でこう語った。
「私自身も議会の請願採択は重く受け止めた中での判断。これは私個人の問題ではなく、対馬市で生活する市民の方たち、そして、対馬にこれから育つ子供たちの将来を考えた。議会と反する結果ではあるが、今後議会には丁寧に説明をした中で理解を求めたい」(27日付「毎日新聞」電子版)
《追記ー2》〜二元代表制のもうひとつの姿(その2)…「イ−ハト−ブはなまき」との雲泥の差!!??
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、斉藤鉄夫国土交通相が軟弱地盤改良に必要な設計変更を承認するよう勧告したことに対し、沖縄県の玉城デニー知事は27日、県庁で記者団に「期限までに承認を行うことは困難だ」と述べた。勧告は27日までの承認を求めていたが、知事は判断を先送りする。国交相は今後、地方自治法に基づき、承認するよう指示する文書を県に送るとみられる。
玉城知事によると、国交相宛てで送った27日付の回答文書では、県民や行政法学者らからさまざまな意見が寄せられていることを挙げ「県政の安定的な運営を図る上で、これら意見の分析を行う必要があることなどから、勧告の期限までに承認を行うことは困難である」とした。判断する時期のめどについては、取材に対し「その都度、対応は検討したい」と明言を避けた。
知事が「指示」にも従わない場合、国交相は、知事の代わりに承認する「代執行」に向けた訴訟を提起する見通し。設計変更は、辺野古にある米軍キャンプ・シュワブ東側の埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤を改良するため、2020年4月に防衛省が申請。県は21年11月に不承認としたが、国交相は22年4月、不承認を取り消す裁決をし、県に承認を迫る是正指示を出した。県は是正指示などの取り消しを求め提訴したが、9月4日の最高裁判決で敗訴が確定した(27日付「毎日新聞」電子版)
《追記ー3》〜日本人は国民的規模で「狂っている」!!??
こんなショッキングなキャッチコピーが踊る書籍の広告が目に飛び込んできた(27日付「朝日新聞」)。内田樹(知の巨人)と白井聰(気鋭の政治学者)との対談集『新しい戦前』。「大軍拡、物価高でもまるで無反応」「自己防衛の果てに壊れる若者」…。おどろおどろしい小見出しが続く。「この悲惨な現実を見よ」と二人は訴えている。さっそく注文した。29日には届くらしい。この日はちょうど「中秋の名月」。その月明かりの下でページを繰ってみようと思う。