「歴史は繰り返す、いや退行するものなのだろうか」―。パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配する「ハマス」に対するイスラエル側の攻撃がジェノサイドやホロコーストの様相を呈しつつある。“民族浄化”という言葉が亡霊のようによみがえってくる。その都度、宮沢賢治のあの詩が口元からこぼれ落ちる。「南ニ死ニサウナ人アレバ/行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ/北ニケンクヮヤソショウガアレバ/ツマラナイカラヤメロトイヒ…」―。それはもう、祈りにも似た呪文のようなものである。
映画「キラ−ズ・オブ・ザ・フラワ−ム−ン」(2023年10月、米国)を観た。カンヌ国際映画祭で最高賞(パルム・ド−ル)を受賞した「タクシ−ドライバ−」などで知られる巨匠、マ−ティン・スコセッシ監督が手がけた3時間26分の超大作。100年ほど前の1920年代、米国・オクラホマ州の居留地でその土地の石油鉱業権を保持し、潤っていた先住民「オ−セ−ジ族」が次々に謎の死を遂げる。利権がらみの殺人の背後に広がるのはネイティブアメリカン(インディアン)に対する白人の露骨な人種差別である。
わが国も今年、朝鮮人の虐殺事件が起きた関東大震災から丸100年を迎えた。目の前の画面に映画「福田村事件」(森達也監督、9月15付当ブログ参照)の光景が重なった。震災発生(1923年9月1日)の5日後、首都圏から約30キロ離れた千葉県東葛飾郡福田村(現野田市)でもうひとつの殺人事件が起きた。「(讃岐弁を耳にした村人が)聞いたことのない言葉だ。朝鮮語だ。こいつら朝鮮人だ」―。にわか仕立ての「自警団」が襲いかかり、幼児や妊婦を含む9人が殺された。四国・香川から来た行商団の一行(15人)で、全員が被差別部落の出身だった。朝鮮人と被差別部落民…その「差別」の重層構造に打ちのめされた。
「本か、命か」―。『ナチスから図書館を守った人たち―囚われの司書、詩人、学者の闘い』(2019年)と題した本を読んだ。帯にはこうあった。「見つかれば命はない。それでも服の下に隠して守ったのは、食料でも宝石でもなく、本だった。最も激しいホロコ−ストの地で図書館を運営し、蔵書と文化を守ったユダヤ人たちの激闘の記録」―。全米ユダヤ図書館賞を受賞し、6カ国で出版されている話題作である。「独裁者は文化とどう向き合ったのか」―。「文化」を略奪したナチスの手法が新花巻図書館の駅前立地にこだわり続ける上田(東一)市政の強権支配とふいに、ダブったのだった。読み進むうちに心が重くふさぎ込んだ。
どちらも「大量虐殺」を意味するジェノサイドとホロコ−スト…。命をかけて、本(文化)を守ったはずのユダヤ人国家「イスラエル」はいままさに、“民族浄化”という悪魔の道に突き進もうといている。「歴史の退行」「人間の狂気」…私はなす術もなく、ただオロオロしながら、イ−ハト−ブの地から「ツマラナイカラヤメロ」とつぶやくのみである。かつて、「ユダヤ人ゲット−図書館」には次のような掲示が貼られていたという(本文から)
「本は悲しい現実を忘れさせてくれる。本はゲット−(強制居住区)から遠い世界に連れていってくれる。本は何も食べなくても飢えをなだめてくれる。本はあなたに誠実だから、あなたも本に誠実であれ。わたしたちの精神の宝物を保存しよう―—本を!」
(写真は映画「キラ−ズ…」のポスタ−=インタ−ネット上に公開の写真から)
《追記―1》〜「殺すな!ガザの停戦を」、イ−ハト−ブの地からも連帯のメッセ−ジを!?
市議選出馬の背中を押してくれた畏友のルポライタ−鎌田慧さん(『叛逆老人は死なず』の著者)が「殺すな、ガザ地区停戦緊急行動」を呼びかけ、こう書いている。「遠く離れたアジアからの、かぼそい少数の声であっても、国際的にはつながっている」(10月31日付「東京新聞」本音のコラム)。世界全体の平和と幸せを願った宮沢賢治のふるさと「イ−ハト−ブ」の地からも連帯のメッセージを届けよう。
緊急行動は11月4日午後2時から、東京のイスラエル大使館前で。ほかの呼びかけ人は雨宮処凛、上野千鶴子、落合恵子、神田香織、佐高信、田中優子、永田浩三、前川喜平の各氏
《追記―2》〜いますぐ、停戦を!?
上記の呼びかけをした鎌田慧さんらの緊急行動の模様がNHKのオンラインニュ−スで報じられた。「子どもを含めてたくさんの人が亡くなっている状況を見て、何もしないわけにはいかない」と鎌田さんらは即時停戦を訴えた。詳しくは以下のアドレスから。
都内のイスラエル大使館周辺で文化人らが停戦を求め抗議活動 | NHK | 東京都
https://twitter.com/kandakaori/status/1720982872075714821/photo/1
《追記―3》〜ついに「核使用」発言も!?
イスラエルの極右政党の閣僚がパレスチナ自治区ガザ地区への核兵器の使用を肯定する発言をしたことを受け、アラブ諸国から強く非難する声が相次いだ。問題の発言をしたのはイスラエルのエルサレム問題・遺産相を務めるエリヤフ氏。地元ラジオのインタビューで核兵器の使用について問われ、「それも選択肢の一つだ」と語った。発言を受け、ネタニヤフ首相はエリヤフ氏の閣議への出席停止を決めたが、罷免することはなかった。
サウジアラビア外務省は5日、エリヤフ氏の発言を「可能な限り強い言葉で非難する」との声明を発表し、「イスラエル政府に過激主義と残虐性が広がっていることを示した」と批判した。さらに、エリヤフ氏を罷免しないのは「イスラエル政府が人間的、宗教的モラルや法的規範を完全に無視することに等しい」と指弾した(6日付「毎日新聞」電子版、要旨)
《追記―4》〜「絶望するな、希望を持て」!?
「あらゆる状況には、どれほど強力に支配されていようと、必ず別の道があるものです。確立されたものや現状ではなく、別の道について考えるように努め、現在の状況が凍結したものだと思い込まないようにしなければなりません。」―。当欄にたびたび、引用している市民ブログ「浜名史学」がパレスチナ系アメリカ人の文学者、故エドワ−ド・サイ−ドの『ペンと剣』の一節を引きながら、こう書いている。「パレスチナの絶望的な状況の中で、何とかしようという希望を持ち続けたサイ−ドならではのことばである」
《追記ー5》〜ノーモア…”対岸の火事”!?
子どもを含む無辜(むこ)なる犠牲が相次ぐ中、「ガザ」危機への関心が急速に高まりつつある。さっそく、こんなコメントが寄せられた。
※
サイードの「ペンと剣」を読んでいます。70有余年のイスラエルパレスチナ問題に関するサイードの所見からは、アメリカの力を背景にした強いイスラエルが、弱い立場のパレスチナを蹂躙してきた歴史を知ることができます。イスラエルは武力の行使はもちろん、いわゆるプロパガンダを使ってパレスチナがいかに非人道的な行為をしてきたかのようなことを世界に発信しています。
こういう悲惨な歴史を読むと、もちろん外的にはそこまで悲惨ではないけれども、同じような行為がここ花巻市でも今、繰り広げられているような感じに陥ります。すなわち、市当局が市長の言う、声の大きい市民たちの言い分を貶めるような動きになっていることを感じます。
今生きている私たちは、世界史的に見て大きな事件を見つめつつ、身の回りに起きている、世界の問題と繋がる事象に向き合っていることを実感します。排他主義と分離主義的な価値観に鋭い異議を唱えて続けたサイードの主張はここ花巻でも実践されるべきと思います。
《追記ー6》〜「人類の危機」…ガザが子どもたちの墓場に!?
国連のグテレス事務総長は6日、記者団に対し、イスラエル軍による攻撃が続くパレスチナ自治区ガザ地区の人道状況について「子どもたちの墓場になっている」と述べ、即時の「人道的停戦」を改めて求めた。ガザ地区の保健当局によると、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突によるガザ地区の死者は1万人を超え、4割以上は子どもだとしている。グテレス氏は声明を読み上げ、「ガザの悪夢は人道危機以上のものだ。人類の危機だ」と強調。ガザ地区で活動する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員の死者数が89人に拡大したと明らかにした(7日付「毎日新聞」電子版、要旨)
《追記―7》〜「イ−ハト−ブ(まるごと賢治)図書館」の実現へ向けて…病院跡地への立地を求めて、署名運動がスタート
花巻市内でフェアトレ−ド店を経営する新田文子さんが主宰する「暮らしと政治の勉強会」など三つの市民団体が、宮沢賢治ゆかりの地「イ−ハト−ブ」にふさわしい“夢の図書館”を目指した全国規模の署名運動を展開中。署名用紙などは以下からラウンロードを。11月23日必着。
★新花巻図書館は病院跡地に!の全国署名を10月1日スタートします。署名用紙のダウンロードはこちらから。集まった署名は11月23日必着でお願いします。
「全国署名を全国に広げます!〜これまでの経過説明」はこちらから。おいものブログのカテゴリ−「イ−ハト−ブ図書館をつくる会」は「夢の新花巻図書館を目指して」に変更しました。署名実行委員会の活動も報告していきます。新田さんのURLは以下から