「新図書館の立地は旧病院跡地に」―。「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(瀧成子代表)は27日、上田東一市長宛てに賛同署名4,730筆を添えた請願書を提出した。新花巻図書館を考える会、まるごと市民会議、イ−ハト−ブ図書館をつくる会の三団体が10月から、対面のほかインタ−ネットなどで全国に署名を呼びかけた。地域別の内訳は地元・花巻が3,263筆、県内が856筆、県外が沖縄から北海道まで611筆に及び、関心の高さをうかがわせた。この中には宗教学者で当市の初代名誉市民の山折哲雄さん、民俗学者で宮沢賢治・イ−ハト−ブ賞受賞者の赤坂憲雄さん、哲学者で詩人の花崎皋平さんら著名人も含まれている。上田市長の公務と重なったため、市川清志・生涯学習部長が応対したが、今後のスケジュールを説明するに止まった(24日付当ブログ参照)
「(気持ちは病院跡地だが)市から仕事をもらっているので…」「身内に市職員がいるから…」「住所を書けば、役所に身元が分かってしまう」「市長にはたてつけない」―。こんな重苦しい空気を吹き払ってくれたのはとくに女性だったという。「自分たちのためではない。未来の世代のためにも全国に誇れる夢の図書館を残したい」…。一人で524筆を集めたある女性は「それぞれ、立場があるのは理解できた。でも、じっくりと話し合えば多くの人が分かってくれた。足を棒にして、駈けずり回った甲斐があった。遠方の人に返信用切手を同封したのも良かったのかな」と話した。JR花巻駅前や大型のショッピングモ−ルで署名を呼びかけた別の女性はこう語った。
「実際に駅前に立ってみて、どうして(電車の)騒音や振動が激しいこの狭い場所にと思うと、怒りが込み上げてきた。客待ちをするタクシ−の運転手さんからも署名をもらった。大方が(駅前に)反対だった。そりゃ、そうだよね。駅前の事情を一番、知っているのは運転手さんたちだもの」―。「こんなに大変な署名は初めて」というこの女性はそれでも150筆分の署名を届けてくれた。中には、割りばしソフトで有名な食堂の従業員も。「だって、病院跡地にできれば、まちなかの活性化にもつながるし…」
「駅前か病院跡地か」という立地場所をめぐる統計資料としてはこれまで市側が主導した高校生や市民に対する説明会などがある。たとえば、市内6校の高校生(130人)の選択肢は「駅前」が72%、「病院跡地」が19%。また、市民団体11団体(発言者70人)は「駅前」が46%、「病院跡地」が17%となっている。一方、参加者を特定しない市民説明会(発言者81人)の場合、「駅前」が22%、「病院跡地」が40%と数値が逆転している。これについて、市側は「一人で複数回発言された人もいるほか、病院跡地を主張する勢いに圧倒され、発言を控えたという市民もいた」などと過小評価するのに躍起だった。しかし、今回の署名実数こそがこの「逆転劇」の正当性を裏付ける根拠と言える。
他方、被爆地・広島でも市立中央図書館のJR広島駅前の商業施設への移転をめぐる反対運動が起きている。今年6月には市民団体が移転反対の署名5,473筆を集めて、議会請願をした。今回の「4,730筆」はわずか2カ月足らずの集計数字。人口120万人の大都市と比べても驚くべき数だと言える。代表の瀧さんはこう語っている。「歩いてみた感触は市有地があるのになぜ、JR用地を買わなければならないのか。税金の無駄使いではないのかという素朴な市民感情だった。民意が届いていないのではないかという行政不信が根っこにあるのではないか。署名を継続し、来年の2月には第2弾を届けたい」
「やっと、叛逆老人の連帯組織が産声を挙げることができそうだね」―。85歳とは思えない元気な声が耳元に響いた。沖縄・石垣島で軍備増強の反対運動の先頭に立ち続ける山里節子からだった。署名に賛同してくれたお礼の電話を入れた際、私は旧知の山里さんに「イ−ハト−ブ図書館ができた暁(あかつき)には、(宮沢)賢治のメッセ−ジを背負って島を訪れたい」と話していたのだった。大学時代の親友たちから、記者時代の先輩、後輩やアルバイトの女性たちから、取材で世話になった人たちから、亡き妻の知人たちから…。列島を縦断するようなエ−ルが続々と寄せられている。あきらめるのは、まだ早い。
『あきらめから希望へ/生きる場からの運動』(1987年、七つ森書館)―。花崎皋平さんが、賢治の影響を受けた「反原発」の物理学者、故高木仁三郎さん(10月15日付当ブログ参照)との共著として世に送り出したこの本は私の座右の書である。
(写真は市川部長に署名簿を手渡す瀧さんら署名実行委員会のメンバー=11月27日午後、花巻市役所で。実行委員会提供)
《追記ー1》〜全国をかけめぐった”空飛ぶ”署名(コメント欄に写真)
「極端にいえば、10年に一人だけが本を借りるとしても、その気の長さに耐えうる力量を図書館は蓄えるべき」「ぜひ、大輪の花を咲かせて。イーハトーブ図書館ができたら、すっ飛んでいきます」「銀河宇宙に開かれた世界一の図書館を」…。列島の津々浦々から、こんな心温まるメッセージが届いた。署名簿の厚さは約13センチ。「賛同者の思いの深さが伝わってきた」とメンバーたち。
《追記―2》〜物価高騰のあおりで、図書館の規模縮小へ…当市では10年以上も時間の”浪費”!?
建設資材や人件費の高騰から競争入札が不調となり、「塩漬け」状態に陥っていた新図書館の建設事業について、静岡県伊東市は規模を縮小して再設計する方針を決めた。市は、鉄筋造一部RC造5階建て、延べ床面積約7400平方メートル、蔵書は約30万冊の新図書館を7月に着工する予定だった。工事費の総額は約37億円で、国の補助金約15億円と地方債約17・6億円が主な財源だ。
ところが、参加の意向を示していた二つの共同企業体のうち、5月の開札で一つは辞退し、もう一つは予定価格を超過して不調に終わった。ロシアのウクライナ侵攻や円安による建設資材の高騰、建設業界の人手不足による人件費の高騰などが背景にあった。市は8月、再入札しても不調になる可能性が高いとして当面の入札を見送ることを決めた(28日付「朝日新聞」電子版)
《追記ー3》〜四肢切断の子どもたち!?
(CNN) 英国系パレスチナ人の外科医で、パレスチナ自治区ガザ地区で患者の治療に携わったガッサン・アブシッタ氏は、10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルに対して攻撃を行って以降、四肢を切断された子どもの数が推計で700〜900人にのぼると述べた。
アブシッタ氏は、数週間をガザの病院で過ごした後、最近になって英ロンドンに戻っていた。アブシッタ氏はロンドンで行われた記者会見で、麻酔薬や基本的な医薬品もない状態で、子どもたちの手術を行ったと振り返った。アブシッタ氏は「私の推計では、四肢を切断された子どもは現在、700人から900人いる。中には、複数の手足を切断された子どももいる」と述べた。
《追記ー4》〜戦闘再開!?
イスラエル軍は1日朝、パレスチナ自治区ガザ地区全土でイスラム組織ハマスとの戦闘を再開した。両者はカタール政府などの仲介による合意に基づき、現地時間の1日午前7時(日本時間同午後2時)まで計7日間、戦闘を一時休止し、人質らの交換を続けたが、さらなる延長に合意できなかった。戦闘再開により、ガザ地区ですでに1万5千人を超えたとされる死者がさらに増え、人道危機が深まることが懸念される(1日付「朝日新聞」電子版)
《追記ー5》〜ふたたび、戦闘が激化!?
パレスチナ自治区ガザで戦闘を再開したイスラエル軍は1日夜〜2日、南部ハンユニスへの攻撃を強化した。イスラエルメディアが報じた。軍は既に掌握した北部から南部に地上侵攻を拡大する構えで、住民らに南部ラファなどへさらなる退避を要求。ガザの保健当局は1日の戦闘再開以降の死者は200人以上になったと発表した。パレスチナ赤新月社はイスラエルがエジプトからの支援物資搬入も妨害していると非難。人道危機の深刻化が懸念される。
中東の衛星テレビ、アルジャジーラはカタールやエジプト、米国が再び戦闘を休止するための仲介交渉を続けているが、難航していると報じた。軍は2日、戦闘再開後にガザ全域で400以上の標的を攻撃し、うち50以上はハンユニスの標的だったと発表した。ハマスは1日、ロケット弾を断続的にイスラエルに発射し、軍が大部分を対空防衛システムで迎撃した。国境なき医師団(MSF)は声明で「無差別攻撃によりガザに安全な場所はない。持続的な停戦を求める」と訴えた(2日付「共同通信」電子版)
《追記ー6》〜死者が200人近くに
イスラエル軍は2日、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとの戦闘が1日午前に再開して以降、400カ所以上の標的を攻撃したと発表した。ガザの保健当局によると、2日までに193人が死亡し、650人が負傷したという。1週間の一時休戦が終わり、戦闘は一気に激しさを増している(3日付「毎日新聞」電子版)
<署名延長のお知らせ>
新花巻図書館の旧病院跡地への立地を求める署名運動は全国の皆さまのご協力により、4,730筆という予想以上の賛同をいただくことができました。支援者の一人として、感謝申し上げます。行政側の動向が不透明な中、主催団体の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(代表 瀧成子)は引き続き、全国規模の署名運動を続けることにしました。締め切りは2024(令和6)年1月末必着。送付先は:〒025−0084岩手県花巻市桜町2丁目187−1署名実行委員会宛て。問い合わせ先は:080−1883−7656(向小路まちライブラリー、四戸)、0198―22−7291(おいものせなか)
署名用紙のダウンロードは、こちらから。 「全国署名を全国に広げます!〜これまでの経過説明」はこちらから。署名実行委員会の活動報告などは「おいものブログ」(新田文子さん)の以下のURLからどうぞ。