「旧総合花巻病院跡地は仮に3億円の価値があるとすれば、それを使うということはやはり大きなことだと思うのです。駅前のスポーツ用品店敷地については、金額、昨日言いましたけれども、まだ決まっていない。両方とも決まっていないのですけれども、いずれにしても安いものです、旧総合花巻病院跡地に比べますと…」(令和4年12月定例会会議録から)―。14日開催された花巻市議会12月定例会最終日の審議の模様を議会中継で見ながら、私はちょうど1年前の上田東一市長の答弁を思い起こしていた。「思惑通りに進んでいるな」と内心、ほくそ笑むその心中を察しながら…
この日の審議に付された「(新図書館建設候補地の)事業費比較調査」予算(約1,800万円)について、議長と欠席者1人を除いた25人のうち、原案に賛成18人VS.反対7人で、工期に約9カ月も要する予算案が可決された。今定例会前に結成された新会派「緑の風」(4人)は賛成に回った。この中には議会側の「新花巻図書館整備特別委員会」(令和2年12月解散)の委員長を務め、上田市長に対して病院跡地への立地を決断するよう鋭く迫った議員も含まれていた。何よりもこの当事者の口から今予算案に賛成した理由を聞きたいと思ったが、それはかなわなかった。
一方、2人が反対討論、1人が賛成討論に立ち、久保田彰孝議員(共産党)は「立地候補地のひとつである病院跡地についてはすでに5年前の協定で市側が買い取ることが決まっている。これに対し、市側が主張する駅前用地は所有者のJR側から新たに取得することになり、税金の二重払いになる。これが“立地論争”の原点だったはずだ」と反対の理由を述べた。
「行政の政策立案に当たっては最終的に“利益”があるかどうかが決め手になる。コストパフォーマンス、つまり費用対効果を考える際、その事業にもうけが生じるかどうかがポイントだ」―。3年前の令和2年1月、議会や市民の頭越しにいきなり、住宅付き図書館の駅前立地という構想が公表された直後、当時の副市長は「儲(もう)かる図書館(公共施設)」の正当性をこう強弁した。以来、図書館問題はこの「コスト」論争に傾く形で進められてきた。事業費の比較はもちろん欠かせないが、何より優先させなければならないのは「図書館とはどうあるべきか」という理念論争である。
「事業比較業務は公共機関などが発注する調査設計や地質、測量、補償などの調査を請け負う、いわゆる『テクリス登録』に搭載されている専門業者数社に入札をお願いしたい。個別の企業名は明らかにできないが、いずれも図書館に詳しい実績のある企業だと思っている」―。市川清志生涯学習部長はこの日の質疑の中で、こう答弁した。いずれにせよ、誰の目にも公明正大なコンサルタントの「事業費比較」を期待したい。「どっちが高いか、安いか」―図書館という文化施設の立地の是非が「コストパフォーマンス」(費用対効果)に偏した原因の背後にうごめくのはやはり、“利権の構図”しかない、とこの日の質疑を聞いて確信した(8月17日、同23日、9月4日付当ブログ「新花巻図書館をめぐる”利権の構図”」シリーズを参照)。駅前立地を正当化するための”からめ手”からのアリバイ工作でないことを切に願いつつ…
(写真は18対7の賛成多数で可決された予算案=12月14日午前、花巻市議会議場で。議会中継の画面からの撮影のため、画像が乱れている)
<署名延長のお知らせ>
新花巻図書館の旧病院跡地への立地を求める署名運動は全国の皆さまのご協力により、4,730筆という予想以上の賛同をいただくことができました。支援者の一人として、感謝申し上げます。行政側の動向が不透明な中、主催団体の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(代表 瀧成子)は引き続き、全国規模の署名運動を続けることにしました。締め切りは2024(令和6)年1月末必着。送付先は:〒025−0084岩手県花巻市桜町2丁目187−1署名実行委員会宛て。問い合わせ先は:080−1883−7656(向小路まちライブラリー、四戸)、0198―22−7291(おいものせなか)
署名用紙のダウンロードは、こちらから。 「全国署名を全国に広げます!〜これまでの経過説明」はこちらから。署名実行委員会の活動報告などは「おいものブログ」(新田文子さん)の以下のURLからどうぞ。