「当たった、当たった」―。宝くじにでも当たったのかと思ったら、新花巻図書館の立地場所の意見集約をするための「市民会議」への案内状が届いたというお話しである。市側の計画によると、無作為抽出した市民2500人へ案内状を郵送し、この中から50人の委員を選出。今月から年末にかけて4回前後の会議を開催し、「駅前か病院跡地か」―どちらかの立地場所に最終的に絞り込むことにしている。この際の討議資料となる事業費や駐車収容数、土地形状など立地環境を「比較検討」する委託調査もすでに終了しており、その内容も注目される。
一方、病院跡地への立地を求める「花巻病院跡地に新図書館つくる署名実行委員会」(三つの市民団体で構成)は第1次と第2次とを合わせた累計9745筆(花巻市内6771筆、県内1638筆、県外1336筆)の署名をすでに市側に提出している(10月15日現在)。「図書館の空間は無限大」として昨年10月には全国署名に踏み切り、その年のクリスマスイブを皮切りに市内のスーパーなどでの街頭署名も始めた。この活動を担った多くは「雨ニモマケズ」精神を背負った後期高齢者の“老人パワー”だった。
「50vs9745」―。市人口90,156人(令和6年9月末現在)と単純比較してみても、50人は全体比1・8%、9745人は同9・3%で、このどちらに数字上の有意性(統計学上の意義)があるかは一目瞭然である。しかも、無作為抽出(標本調査、いわゆる“くじ引き”)で選ばれた2500人の中から50人を選出する際の手法は明らかにされていない。そこに恣意(しい)が入りこむ余地はないのかー闇は深まるばかりである。
「対象者以外の方は、会議の一部を傍聴することができます。詳細については後日お知らせします」―。10月10日付の市HPにこんな告示が載った。また、ぶったまげた。「公を共に」という「公共図書館」のしかも、その立地場所を協議するという「市民」会議の傍聴は「一部」に限られるというご託宣である。聞いたことがない。多額の予算を計上し、意見集約を外部のファシリテーター(進行役)に委ねるはずだった「公募プロポーザル方式」が不調に終わったのは記憶に新しい。そういえば、その選定を審査する委員会が突然非公開になり、市職員が築く“人垣”(関所)によって、入場を阻まれるという一幕もあった。何か見られたくないことや聞かれたくないことでもあるのだろうか。
“利権”がらみが噂される中、新図書館の迷走劇は止まるところを知らない。最終幕の「新図書館『市民劇場』」は必見である。「(傍聴は)チョットだけヨ」(ザ・ドリフターズ「全員集合」のテーマ曲)と言われると、なおさら見たくなったり、聞きたくなったりするのが人間の性(さが)というものである。一刻も早く、公演日程をHP上に公開してほしい。
(写真は「今年のクリスマスプレゼントは図書館です」と署名を呼びかけるお年寄りたち=2023年12月24日、イトーヨーカド―花巻店で)