「一斉休校と一斉休館と」―。安倍晋三首相の唐突な“号令”に歩調を合わせるかのように花巻市の公共施設の一斉休館は今月2日にスタ−ト。当初の期限の19日を前にその数は50か所以上に及んでいる。一方この日、図書館に限って21日以降の休館が解除されることが公表されたが、そのほかの公共施設では今月末まで継続されることになった。「万が一に備えるのが危機管理」(上田東一市長)という理屈はわかるが、「緊急事態宣言」の発動をちらつかせる国のトップダウンに同調するだけで、果たして良いものか。「私権」の制限が危ぶまれる宣言だが、今回の「コロナ」危機は一方で「地方自治の本旨」(自治の独立)を問いかける形にもなった。
継続休館は地域活動の拠点となる27か所の振興センタ−のほか、宮沢賢治記念館や高村光太郎記念館、市博物館などの観光施設、主にシニア世代の活動の場である「まなび学園」などで、町内会が運営する「地区公民館」も休館を要請された結果、全地域での社会活動がほぼ麻痺状態に陥っている。そんな中、「情報拠点でもある図書館の全面休館は納得できない」、「学校が長期間休校になるいまだからこそ、子どもたちに読書の機会を与えたい」、「貸し出し自体の禁止は異常だ」…などの意見が殺到したため、市内の4館は当面、土日に限って開館することになった。
そもそも、当市の図書館への異常な対応は最初から、他自治体に比べても突出していた。県内14市中、国が休校措置を決めた今月2日から19日までの全面休館に踏み切ったのは陸前高田と大船渡両市だけ。残りの自治体では3月中の図書館関連の行事を中止した程度で、ほぼ通常通りの業務を行った。このほか「休校中の小中学生の入館制限」(北上市)、「学習コ−ナ−の高校生以下の利用制限」(奥州市)、「児童生徒に変わる保護者への貸し出し」(滝沢市)など実情に即した臨機応変な対応が目立った。さらに、岩手県立図書館では5冊の本を詰め合わせた“福袋”を用意し、昨年の同時期より保護者の利用が1・5倍も増えるなど好評を博した。
「ワンマンによる“トップダウン”行政だから、国のトップダウンには従わざるを得ないのだろうが、それにしても地方自治の裁量権を放棄した自殺行為ではないか」―こんな厳しい声が上田市政に寄せられている。コロナ危機に加え、「新図書館」構想の事実上の撤回、そして、にわかに降ってわいた“パワハラ”疑惑の包囲網の中で、上田市長はどこに打開策を見出そうとしているのだろうか―
図書館こそが「危機管理の最前線」に位置していることをこの人はご存じないみたいである。ご本人は歯牙(しが)にもかけなかったが(2月21日付当ブログ参照)、2019年10月8日付の当ブログ(映画「『ニュ−ヨ−ク公共図書館』と花巻中央図書館構想の狭間にて」)をとくと読み直してもらいたい。「図書館は民主主義の柱であり、同時に社会インフラの根本である」―ということが書いてある。もっと、言おうか。「万が一のリスクを覚悟することも政治家(リーダー)に課せられた、つまり、あなたが背負わなければならない使命―ミッションなのだ」―と
ちなみに、趣味で通っているイベント団体の主催者からの連絡で、私は公共施設の休館延長を初めてを知った。HPでその事実を確認したのはずっとあと。庁内の無秩序状態が目に浮かんでくる。このまちのスローガン…「イーハトーブはなまき」はいま、沈没の瀬戸際に立たされている。
(写真は休館の表示を掲げた図書館の出入り口=3月16日、花巻市若葉町の花巻市立図書館で)
《追記−1》〜図書館特別委員会の設置へ
花巻市議会の3月定例会最終日の18日、図書館のあり方などを調査・研究する「新花巻図書館整備特別委員会」が正式に設置されることが決まった。議長を除く全議員(25)人で構成され、委員長に伊藤盛幸議員(市民クラブ)、副委員長に佐藤峰樹議員(明和会)を選出した。前掲の「一市民」が指摘するように二元代表制に則った図書館論議を積み重ね、議会としての独自の「図書館」像を示してくれることを期待したい。
《追記―2》〜「対岸の火事」とはなさずに「他山の石」となせ!!
「佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない これが財務官僚王国 最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ、手がふるえる、恐い 命 大切な命 終止府(原文のまま)」(コメント欄に”遺書”の全文を掲載)―。衝撃的で痛切な内容の一通の“遺書”が19日付の新聞各紙で公開された。2年前、学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題に抗議・自殺した同省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)が書き残していた。
赤木さんの妻が18日、国と佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長に計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした際に明らかにされた。読む側にとっても、震えを押さえることができない文面である。あちこちで、“パワハラ”騒動はあとを絶たない。決して「対岸の火事」と目をそらしてはならない(3月4日付と同6日付け並びに同18日付の当ブログ「パワハラ」関連記事を参照のこと)
《追記―3》〜ヤマハ、「パワハラ」自殺を認定
大手楽器メ−カ−ヤマハ(本社・浜松市)の男性社員が今年1月、上司から厳しい指導を受けて体調を崩し、自ら命を絶っていたことがわかった。会社側は、体調不良の背景にパワーハラスメントがあったことを認め、「関係者におわびし、再発防止に全力を挙げる」としている。会社や関係者によると、亡くなったのは研究開発部門の30代の男性社員。昨春、課長職に起用されたことで、研究開発部門の執行役員だった50代の上司の男性と接する機会が増えた。上司は2017年に他社から中途採用された。
会社によると、男性社員は、昨年6月ごろから体調を崩し、精神科を受診。11月から休職して実家で療養していたが、今年1月、自死した。社内の通報窓口に昨年末、男性へのパワハラを示唆する情報が寄せられていたという。ヤマハは、男性の死を受け、第三者の弁護士に調査を依頼。男性が体調を崩したのは、上司によるパワハラ行為の影響があったと認定し、上司を3月末で退職扱いとした。上司は1月から出社していないという。
ヤマハの山畑聡常務執行役は「ご遺族には大変申し訳なく思う。内部通報まで気がつかなかった。対話重視で風通しの良い職場を作り、コンプライアンスを強化したい」と話している(3月20日付「朝日新聞」電子版)