「中央広場のトイレは6月13日から利用できます」―。コロナ漬けになっていたせいなのか、花巻市のHPのお知らせ(記者会見資料)を見て目が点になった。そもそも「3密」とは無縁だった、つまり「人気(にんき&ひとけ)」がほどんどなく、“無用の長物”と冷ややかな目が注がれていた空間に「いまさら、トイレ!?」っていう感じである。約3カ月間に及ぶ公共施設の一斉休館からやっと解放されたのもつかの間、コロナ対応で見せた上田(東一)「迷走市政」は今後もやむ気配がない。
その迷走ぶりというか、あまりにも無頓着な危機管理能力のなさをさらけ出したのはコロナ禍が起きた直後のこと。「持病のある方、ご高齢の方はできるだけ人混みの多い場所を避けるなどより一層、注意してください」―。市当局はいち早く、「新型コロナウイルス感染症に関して」と題するチラシを3月1日付の市の広報誌に折り込んで全戸配布した。ところが、コロナ感染が懸念される中、チラシ作成(2月21日)の2日後の23日、地元特産品などを販売する当市最大規模の「どでびっくり市・冬の陣」がこの場所で強行された。一方で外出自粛を呼びかけながら、他方で参加を要請するという”たぶらかし”、つまりはある種の詐欺行為。「3密」(密接・密集・密閉)防止などどこ吹く風である。この時の(「急がば回れ」の鉄則を無視した)拙速がその後の特別定額給付金(10万円)の申請をめぐるトラブルなど“迷走劇”の幕開けだったのかもしれない。
公共施設としての「花巻中央広場」は中心市街地の活性化をうたい文句に昨年7月にオ−プンした。酷暑に見舞われたその年、「熱中症にかかりに行くようなもの」など不評タラタラだった同じ場所に、今度は車いす使用可の男女兼用多目的トイレの出現。本来ならもろ手を挙げて歓迎すべきなのだが、一体どうして?当ブログ(2019年9月5日、同12月18日及び2020年2月21日、同2月29日付)ではこの広場の不幸な生い立ち(出生の秘密)について詳しく触れてきた。この場では上掲写真を見ながら、この上田「失政」のシンボリックな光景について、簡単に説明しておきたい。
手前に建つ箱型の建物が今回設置されたトイレで、その前方に広がるのが遊具の備えもない空間で、それでも市の公園条例が定める「公園」としての公共施設に位置づけられている。そそり立つようなコンクリ−トの擁壁が目に飛び込んでくる。その上のカワラぶきの日本家屋が解体が予定されている旧料亭「まん福」―。どうみても異様なたたずまいである。
実はこの一帯は当初、市の立地適正化計画よって、定住促進を進める「居住誘導区域」に指定されていた。ところが、国交省から「急傾斜地のそばに住宅地を造成するとは。住民の命を何と心得ているのか」とお叱りを受けた。議会側にもきちんと説明をしないまま、急きょ、崩落防止用の頑丈な擁壁をしつらえて“公園”もどきに衣替えしたという経緯がある。つまり、上田市政というより、上田市長にとっては絶対に外部に知られたくない「マル秘」(負の遺産)が、この光景の背後には隠されているというわけである。人寄せパンダみたいな“やらせイベント”が横行している所以(ゆえん)である。その最たるものがコロナ禍のさ中の「3密」イベント―「どでびっくり市」であろう(“公園”と称する割には周囲が建造物で囲まれており、そもそも密閉感が強い)。腰を抜かした(どでびっくり)したのはこっちの方である。
「公園は腐を転じて鮮となす」「精神の洗濯場、空気の転換場であれ」(5月21日付「朝日新聞」天声人語)―。文豪の幸田露伴は著書にこう書き残しているという。明治時代、“都市の肺”として造成された公園にいま、コロナウイルスの脅威が忍びよる。酷暑の夏がまた、目の前に迫ってきた。さて、大枚750万円を投じてトイレを設置したわが広場は果たして、「精神の洗濯場」になり得るや否や…
「ケ−ン、ケ−ン」「チョッ、チョッ」―。隣家の畑からキジのつがいがさえずる声が聞こえてきた。エサをついばむのに夢中なのか、当方の気配にはお構いなし。「頭隠して、尻隠さず」―。この鳥には追われると草むらの中に頭を突っ込んで隠れる習性がある。お〜い、お尻が丸見えだぞ〜。人間社会では「一部だけを隠して、すべてを隠したつもりでいる愚かさを笑う」―際の比喩に使われる。誰かさんみたい。あっ、そうそう。「キジも鳴かずば、撃たれまい」に…
(写真は街なかに出現した上田「失政」のシンボル=花巻市の吹張町と鍛治町にまたがる花巻中央広場で)