「受託先と委託先の役職を同一人物が兼務。仮に法的には問題がないとしても社会通念上、こうした関係はおかしいのじゃないか」―。花巻市議会9月定例会の決算特別委員会が14日から3日間の予定で開会したが、初日のこの日、羽山るみ子議員(花巻クラブ)が当ブログ「検証『上田流コンプライアンス』の詐術」(9月10日付)を引き合いに出し合いながら、「ここに書かれていることは事実か」と迫った。令和2年度の決算として「花巻温泉郷廃棄物処理組合事業補助金」という名目で、1,400万円が計上されている件に関連して追及した。
私は当該ブログの中で、こう指摘した。「温泉郷から排出される廃棄物の処理事務を担当する『花巻温泉郷廃棄物処理組合』に対しては当市から2分の1の補助金が支払われ、実際の処理業務は市内の廃棄物収集処理業者の株式会社『サンクリ−ン』に一括委託されている。たとえば、令和元年度の場合、その委託料は組合負担を含めて、4千万円近くの巨額に及んでいる。仮に受託者と委託者の兼務が法的に問題がないとしても、世間の常識からはかけ離れているのではないか」―。羽山議員もこの点について、「私自身も色んな人たちの意見を聞いた。法律の次元とは別にほとんどの人が理解できないと言っていた」と市側の認識をただした。
答弁の中で市側は「たしかに処理組合の組合長が委託先のサンクリ−ンの監査役を兼任している。地方自治法には首長などの兼業禁止規定(第142条)が定められているが、今回のケ−スはそれ以外の関係であり、法的な違反行為には当たらないと判断している。それが市としての認識だ」と答弁した。当初、市側は「手元に資料を持ち合わせていない」などとして、答弁を保留する場面もあったが、処理組合の加盟社数や委託先と委託料、兼務の事実関係などは結局、認めざるを得ない事態に追い込まれた。
一方、この日の地元紙「岩手日報」は来年1月に行われる次期市長選に花巻市議会議長の小原雅道さん(61)が出馬の意向があることを報じた。現職の上田東一市長は決算特別委の席上でもその去就については一切、触れなかった。藤原忠雅・副市長のコロナ禍での”会食”事件、ワクチンの誤接種、市民への事務通知をめぐって、当事者の生死を確認しないという前代未聞の「人権」侵害…。当ブログでも再三、言及してきた不祥事の連鎖の中で、現在2期目の上田市長が3期目に挑むのか―市民の関心が高まっている。
次期市長選は来年1月13日告示、同23日投開票。小原議長は1999年の旧東和町議を経て、現在4期目。2015年から議長を務めている。元テレビ局報道記者。
(写真は廃棄物処理問題で市側を追及する羽山議員=9月14日午後、花巻市議会議場で。インターネットの議会中継の画面から)
《追記》〜あぁ、「家畜撲殺同意調印法」と「イーハトーブ牛タン物語」
「一体この物語は、あんまり哀れ過ぎるのだ」―。この日の決算特別委員会での「イ−ハト−ブ応援寄付金」(ふるさと納税)に係る質疑を聞きながら、私は宮沢賢治の童話『フランドン農学校の豚』の一節を思い出していた。本舘憲一議員(花巻クラブ)が令和2年度の寄付金が県内トップの約30億円に達したことに触れ、「ふるさと納税のポ−タルサイトで当市の牛タンが全国1位になったと聞いている。外国(アイルランド)からの輸入品が地場産品の返礼品として果たして、ふさわしいだろうか」とただしたのがきっかけ。冒頭の文章はこう続く。「とにかく豚はすぐあとで、からだを八つに分解されて、厩舎(きゅうしゃ)のうしろに積みあげられた。雪の中に一晩漬(つ)けられた」―。その残酷なシ−ンがふいにまぶたに浮かんのである。
上田市長は答弁の中で、「その加工技術や味付けなどの付加価値が総務省の選定基準を満たしているので、何ら問題はない。仙台の牛タンだって、ほとんどが輸入品だと言われている」と言ってのけた。ところで、賢治作品はこんな風に展開する。…「家畜撲殺同意調印法」の布告に伴い、農学校で飼われていた豚に対し、死亡承諾書が突きつけられる。恐怖心にかられた豚は捺印を拒否し続けたが、結局は同意させられる。そもそも、豚と牛とは兄弟家畜の代表格である。で、私はと言えば、賢治の理想郷「イ−ハト−ブ」で繰り広げられたこの日の“牛タン”論争に心底、怖気(おじけ)づいてしまったという次第である。つまりはおらが首長の、その想像力の貧困と品性の愚劣さとに。貧(ひん)すれば鈍(どん)するとは言うものの、イーハトーブに「牛の舌(ベロ)」は余りにも不釣り合いではないか…