「(沈没した英国の豪華客船)タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」―。財務省トップの矢野康治事務次官は先の国政選挙を前に総合雑誌『文藝春秋』(11月号)で、与野党の各種給付金の公約ラッシュに対し、「バラマキNO」と警鐘を鳴らして注目されたが、わが足元ではまるで「票をカネで買う」とでも言いたくなるような“バラマキ合戦”が進行している。その傾向は次期市長選をめぐる現職候補の動きに顕著に見られ、たとえば「第4弾」と銘打った「PayPay(ペイペイ)」キャンペ−ン(令和3年12月1日〜同4年1月10日)に目を向けてみると―
「新型コロナウイルス感染症の影響を受けている市内事業者を応援するため、市内の対象店舗でキャッシュレスQRコ−ド決済サ−ビス『PayPay(ペイペイ)』で決済した場合に、支払額の最大20パ−セントのPayPayボ−ナス(ポイント)を還元するキャンペ−ンを実施します」―。HP上の触れ込みはこうだが、スマホやパソコンなどのモバイル機器に縁遠い老人世帯や障害者などの弱者には支援が届きにくい。実際、私自身も活用を何度か試みてみたが結局、その恩恵に浴さないまま現在に至っている。PayPayアプリをダウンロ−ドす「操作説明会」も設定されたが、それもすでに終了したたったの一日だけ。そもそも私の周辺には旧型のガラケ−所持者がまだまだ多い。
初雪が舞った12月2日、イト−ヨーカド−花巻店に隣接するバスタ−ミナルに新しい待合所が完成、供用を開始した。3日開会した花巻市議会9月定例会の行政報告で、上田東一市長は「本格的な冬の到来を前に市民や来訪者の公共交通の足を確保できた」と報告した。今回の正式な工事名は「イト−ヨ−カド−交通結節点整備工事」で、工期は8月26日から12月15日となっている。約2週間前倒しした“見切り発車”となったが、担当部署は「各種の完成検査は終了しており、供用開始に問題はない。企業努力で工期より早く完成にこぎつけることができた」と説明。私は一見、”市民目線”のこの言葉の背後に上田市長の常套句―「市民の安心・安全」を重ね合わせ、何か鼻白む気持ちになった。
というのは、背筋が凍り付くようなあの「悪夢」が頭をよぎったからである。東日本大震災で被災した人たちが入居する「災害公営住宅」(市内上町)で、本来なら併設されているコンビニ側が負担すべき共用部分の電気料金を入居者に肩代わりさせていたという例の一件である(10月11日付当ブログ「『被災者に寄り添う』という”真っ赤なウソ“」参照)。このアッと驚く事案について、上田市長が直接、当事者に釈明したという話は寡聞(かぶん)にして聞かない。「電気料金が家賃より高いなんて!?」―。オープンと同時に入居し、その後妻を亡くした80歳の男性の悲痛な訴えがまだ、頭に響いている。
地方自治体の情報専門誌『日経グローカル』(5月発行、NO411)によると、当花巻市は令和2年度、一般会計補正予算の上程回数が30回と全国自治体の最多を記録した。ほとんどが「コロナ」関連で、しかも議会の議決を必要としない”専決処分“が多くを占めた。次期市長選が迫る中、上田市長の「GoToバラマキ」戦術にはますます、拍車がかかりそうな気配である。税金を食い物にした「究極の選挙運動」…こんな意地悪な陰口が漏れ聞こえてくる昨今である。
(写真バス待合室の完成式でテ−プカットに臨む上田市長(右から2人目)=12月2日午前、花巻市下小舟渡で)