「華々しいキャリア(経歴)、中央とのパイプ…。上田(東一)市長には期待が大きかったが、今となってはすべてが裏切られた思いだ。お前らには何もわかっていないっ、こんな頭ごなしの市政にだまされた俺たちの方がバカだったのでは…」―。自分の歳(81歳)を忘れて「亀の甲より、年の功」―だなと思わず、うなってしまった。
次期市長選への立候補を決めている前花巻市議会議長、小原雅道氏(61)を囲む高齢者の集いが6日、同市内で開かれた。参加したのは市内在住の男女10数人で、平均年齢が80歳前後の人生の達人たち。歯にきぬ着せぬ発言が相次ぎ、もう止まる気配がない。「そのパイプって、何なの。私にはさっぱりわからない」、「私が住んでいる地区では住宅の新築ラッシュ。でも、隣の北上に進出した半導体工場(キオクシア)の労働者用らしい。いつも置いてきぼり」、「審議会とか委員会とかあるじゃない。いろいろ発言しても(政策に)取り上げられたことはない。建前だけの会なんて、やめた方がいいんじゃないの」、「職員の表情から輝きが失われてしまった。市役所に行くときも何となく、足が重くって」…
最初は老人パワ−に圧倒されっぱなしの小原氏だったが、ひと回り大きくなった風格で向き合った。出馬宣言の直後、「なぜ首長を目指すのか、その立ち位置が見えない」といった声も多かっただけに、その様変わりにこっちもびっくり。「パイプって、どこかで売っているもんじゃないんですよね。それは地道に努力して、作り上げるもんだと私は考えています。何とか委員会とか、私も単なるアリバイ作りの場だと正直、思っています。すぐ、改善します。それと歩きながら、賢治さんと遭遇できたり、感じたりできるような、そんな『歩く観光』も楽しいですよね。夢想家と言われるかもしれませんが、それでも私は将来に夢を描きたいんです」―
ひとりの男性が高笑いしながら、言い放った。「もう、過去は笑い飛ばして、リセットしようや」…みんなつられて、笑った。豪快な笑いを聞きながら、私もひとりほくそ笑んでいた。この応援団には「ベラ−寿の会」という命名がぴったりだな、と―。「ベラ−ジュ」はフランス語で「美しい年齢」の意。「ジュ」の部分には“長寿”をことほぐ日本語の「寿」(ことぶき)を当てた。宮沢賢治の「イ−ハト−ブ」にならった“造語”のつもりである。ちなみにこの日の会を呼びかけたのは、私たち数人の仲間が立ち上げた「銀河の郷、輝く未来へ〜『イ−ハト−ブ』の実現を目指す花巻有志の会」である。
(写真は身を乗り出すようにして、小原候補の話に聞き入る「ベラ−寿の会」の面々=12月6日午後、花巻市若葉町の食堂で)