「職員の顔色をうかがう、甘い上司では、首長の仕事は全く前に進みません」―。次期市長選への立候補を表明している現職の上田東一市長の東和支部後援会(小田島峰雄支部長)の下で支部長代行を務め、かつては上田市長の側近だった佐々木忍元副市長がパワハラを容認するとも受け取られかねない文章を後援会報に掲載、有権者の反発を呼んでいる。
佐々木元副市長は農林水産部長や健康福祉部長などの要職を経て、上田市長の下で5年間副市長を務めた。問題の文章は令和3年11月15日発行の上田東一後援会東和支部の「上田会報」(第3号)。「現花巻市政2期8年を振りかえって」と題する文章の中の当該部分には以下のように記され、冒頭の「パワハラ”容認“」発言へと続いている。「『職員に対して厳しすぎる』という声もあるやに聞いておりますが、市職員は市民のために仕事をし、給料をいただいている専門集団でありますから、スケジュ−ル的な窮屈さや、施策の磨き上げの段階で多少厳しい面があったにしても、何より市民のための最善の策を考え、実施する責務があります」―
今年10月25日、市側から「総合花巻病院の建物・施設解体、土地譲渡に関する状況」に関する資料が公開された。その中で、旧病院の建物や施設に対して国や県・市から支出された各種補助金が返還免除になっていることが明らかになった。耐震化工事費用や旧看護宿舎の建設費用、非常用発電設備補助金などで、その免除総額は2億1600万円以上にのぼっている。なぜ、いったん交付された補助金が返還免除になったのか。この金品の流れの背後に総合花巻病院の移転・新築をめぐる不明朗な動きが隠されている。
昨年3月、旧県立厚生病院跡地に新規オ−プンした同病院は実は前市政時代に建物の「長寿化」方針を決め、県・市から総額約5千500万円の補助金を受けて耐震化工事を終了していた。その後、上田市政のスタ−トと同時に「移転・新築」計画が急浮上し、耐震化工事が終わったばかりの病院施設が撤去されるという真逆の施策が強行された。その裏で辣腕(らつわん)を振るったのが佐々木元副市長だった。
市の財政補助としては過去最大の約20億円という巨額が注がれたこの「移転・新築」構想は当初、老朽化に伴う病院側からの要請を受け「市民の健康」を確保するための事業として、HP上などでその必要性が説明されてきた。ところが、当時の病院側の役職者のひとりはこうもらす。「実は話は全くの逆。金を出すから、移転してほしいという行政主導型の構想だった。長寿化方針を決めておきながら、一方でそれを撤去するなんて世間に通用するはずがない。ご祝儀相場ではないが、上田市長誕生に際しての”打ち上げ花火“にしたかったのではないか」―
上田市政の政策理念の柱である「立地適正化計画」は2016(平成28)6月、全国で3番目に制定された。以来、この上位ランク入りが自慢の種になり、総合花巻病院の新規オ−プンがその“成功体験”の第1号として喧伝され、現在に至っている。その虚実の実態は上記の病院関係者の証言で明らかである。そして、このような強引な市政運営を可能ならしめたものこそが「上田×佐々木」という似た者同士の“パワハラ”体質だったことが今、やっと白日の下にさらされつつある。“特命事項”を一身に託された佐々木元副市長は恥も外聞も投げ捨て、恥ずかしげもなくかつての上司を持ち上げている。よう言うわ、である。「語るに落ちる」とはこのこと…
「上田市長は私利私欲や一部の声の大きい方に偏った政治とは無縁の首長で、花巻市の将来像をきちんと描きながら、他に先がけて施策を立案・実施しておられます。…このように、2期8年、上田市長は花巻市の未来のために、そして市民福祉向上のために、全身全霊をかけて有利な仕事を果敢に実施してこられた、類(たぐい)まれなるリ−ダ−でありますので、その継続を望むものです」(後援会報から)―
(写真は「パワハラ“容認”」発言が載っている上田市長の後援会報)