「15,297円」(一世帯当たりの返還額)―。数字がびっしり詰まった共益費算定調書(A4版4枚)なる書類を受け取って、被災者のひとりは宙を仰いで絶句した。「とかくこの世は金次第とはいうものの、これじゃまるで選挙目当ての“買収行為”と同じじゃないか。心がない。被災者をバカにするのもほどがある」。事の発端は大雪と寒波に見舞われた一年前にさかのぼる。東日本大震災に伴って建設された「災害公営住宅」(上町棟)で、私があえて「『被災者に寄り添う』という真っ赤なウソ」(10月11日付当ブログ参照)と呼んだ、とある“騒動”が起きた。
「電気料金が家賃より高いなんて。近年にない寒波だとしても…」―。今年1月、入居する被災者たちは電気料金の請求書を見て、腰を抜かした。管理会社を通じて、事実関係を調べた結果、1階部分(居室3戸分)に併設されていたコンビニ負担分の共益費(融雪用の電気料金など)が入居者に肩代わりさせられていたことが明らかになった。私がこの情報を入手し、上記ブログに告発記事を掲載したのは10か月も後のことである。それからさらに約2か月を経て、次期市長選の動きが活発になりつつあった12月初旬、過払い分の返還通知が突然、配布された。
令和元年4月のオ−プン時から今年10月までの数字を羅列した書類を手に入居者の日出忠英さん(80)は声を震わせた。「後で振込先を連絡するように伝えられただけで、今回の件についての経緯や釈明のひと言さえない。私たち被災者はほとんどが年金生活者で、みんな爪に火をともすようにして暮らしている。でも生涯、お世話になるということで、過去の分の追い払いは要求しないように、とみんなで話し合った。これじゃ、まるで私たち被災者の気持ちを逆なでするような仕打ちじゃないですか」
「札束で頬をはる」…。ふいに、人品の卑しさを表現する惹句(じゃっく)が口元に浮かんだ。金の力にものを言わせて、人を屈服させる例えである。そういえば、石原伸晃環境相(当時)が福島原発事故に伴う除染廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設の建設を巡り、「最後は金目でしょ」と発言した“金目”発言を思い出した。もう7年も前のことであるが、幹事長まで上り詰めたこの国会議員(自民党)は先の総選挙で落選の憂き目をみた。その後、「内閣官房参与」などという要職にしがみつくなど相変わらず、引き際がみっともないが、さ〜て、我が「イ−ハト−ブ」の首長の行く末やいかに…
(写真は災害公営住宅近くの大堰川を散歩する日出さん。「このあたりでホタルを見つけたんです」と表情を和らげた=花巻市上町で)