次期花巻市長選の告示を3日後に控えた13日、立候補を予定している現職の上田東一市長(67)と初挑戦となる前市議会議長の小原雅道氏(61)による公開討論会が花巻青年会議所の主催で行われた(市文化会館)。あらかじめ提示された設問に答える形で両氏が熱のこもった討論を展開。市内の高校生がアンケ−トなどで集めた市民の声も紹介され、参加者は身を乗り出すようにして聞き入った。こんな時に役立つのは「昔、取った杵柄(きねづか)」…新聞記者時代の経験。選挙取材は「公平」を旨とすべしという鉄則を思い出しながら、土俵上の取り組みに見入った。以下はその観戦記―
「コロナ対策や温泉支援、米価下落への補助など打つ手はすべて尽くしてきた」―。立ち合い、上田氏は現職の強みを生かして、小原氏をぐいぐいと土俵際に追い込んだ。2期8年間の実績を次々に披露し、「この勢いを止めることはしない」と語気を強めた。たとえば、と言って固有名詞の企業名を口にすると、すかさず行司役(の私)から「勇み足」の注意が…。「残った、残った」…小原氏が踏んばったのは「(人口の)社会増」論争に突入した時。形勢の逆転につながった歴史に残る名場面である。
「令和元年度から当市の人口は社会増に転じている。子育て世代や移住者に対する手厚い政策の成果だ」と上田氏が胸を張ると、小原氏はこう反論した。「その中にはお隣の北上市に立地した半導体メ−カ−『キオクシア』の従業員が当市に居を構えた、いわゆる“キオシクア”効果も含まれている。それどころか、昨年12月には人口も北上市に抜かれて、県内の第5位に転落した。これからはエリア全体の連携が不可欠。私は近隣の市町村と友好関係を築き、当市を含めた地域全体の浮揚策に全力を挙げたい。最近、北上市長ともじっくりと意見交換した」―。じりじりと土俵中央に追い戻したと思いきや、今度は上田氏が起死回生の一手を繰り出した。市民の関心が大きい「JR花巻駅の橋上化」問題である。
「国の有利な補助が期待できるうちに手を付けるのが首長の役目。じっくりと構えているとその金ももらえなくなる。全体像を考えるのはそれから。市民から具体的な提案があれば別だが…」と上田氏。小原氏が落ち着いた表情で切り返した。「議員に成りたてのころ、政治の先達から、先に期限を付けてはだめ。10年、20年先の展望を持たなければ失格だと教えられた。補助金があるから、何かをしようではなく、市民にとって何が必要かを考え、皆さまと一緒に持続できる花巻を作っていきたい」―。俵(たわら)に片足を残しながらの一本背負いで、勝負あり。齢(よわい)81歳―若干、記者魂が衰えてきた身びいきな判定かもしれないが、さ〜て、観戦に足を運んだ150人ほどの皆さんの行司軍配はいかに!!??新しい市長を決める選挙はあと1週間余りに迫った。
(写真は公開討論会を知らせるチラシ)
《追記》〜「無責任」体制という機能不全
当ブログでも再三、言及してきた災害公営住宅における共益費の入居者(被災者)への「肩代わり」問題の経緯を明らかにするため、市議会産業建設特別委員会(近村晴男委員長ら8人)が14日開かれ、当局側から鈴木之・建設部長らが出席。「契約書の中には電気代などの共益費については一階に併設するコンビニ側(3戸分に相当)も負担すると明記されていたが、現場の担当者がそのことを失念。後任にも引き継ぎを怠っていた」と現場に責任を転嫁するような発言があった。現在、建設部内ではこの案件を担当した職員が長期の病気休職に入っているほか、複数の第一線職員も病欠している。今回の選挙戦でも現職市長の「パワハラ」疑惑が取り沙汰されており、こうした“もの言えぬ”職場の雰囲気が組織全体の機能不全を招いているのではないかという声が高まっている。