「市民のための行政はどうあるべきか。そして民主主義とは…」―。節分の今日(2月3日)、ドキュメンタリ−映画「ボストン市庁舎」(フレデリック・ワイズマン監督、2020年)を盛岡でみてきた。多様な人種と文化が共存する大都市ボストン。警察、消防、保健衛生、高齢者支援、出生、結婚、死亡記録、ホ−ムレスの人々の支援、同性婚の承認など数百種類ものサ−ビスを提供する市役所の舞台裏…。カメラは市庁舎の中へ入り込み、市役所職員とともに街のあちこちへと動き出す。4時間半に及ぶ大作。市民の幸せのために奮闘する市長、マ−ティン・ウォルシュ(現バイデン政権の労働長官)と市職員の姿に身じろぎをしないまま、見入った。
「自分たちの仕事は市民のために扉を開くことです」、「私がやってるのはただの市の仕事ではありません」、「この市を改革して、それが成功すれば、それが州に広がり、最後には国に広がるんです」、「もし困ったことが発生したら、市長の私に電話を。通りで私を見かけたら声をかけて」、「皆さん!助けを求めて下さい。助けるのが、我々の仕事です!」…。ウォルシュ市長の感動的な演説の残響音がまだ、頭にこだましている。
「“ボストンの奇跡”を、『イ−ハト−ブ』(賢治の理想郷)でも…」―こんな願いを込めて支援した小原雅道氏(61)は先の市長選で敗北した。3選を果たした上田東一氏(67)は25日開催の花巻市議会3月定例会の冒頭、「市政方針」演説をする。どんな言葉が語られるのか、期待したいと思う。
「この映画は民主主義が機能している姿を描いていると思う。人々が集まり、あらゆる議論をし、時には妥協して前進するということがボストン市庁舎では行われている。彼らは相手を軽蔑するのではなく、敬意を持って接しようとしている。行政がちゃんと市民のニ−ズに応えていて、自分たちがやっていることに責任を持っている」(パンフレットから)―。ワイズマン監督のこの言葉が印象に残っている。たとえば、大麻ショップのオ−プンをめぐる住民との議論の場面は約20分も続いた。エキサイティングなやり取りに手に汗を握りながら、ふと思った。足元の「市民参画」という言葉の何とも空虚なことよ、と…
(写真は市民を前に演説をするウォルシュ市長=インタ−ネット上に公開の映画の一場面から)