「看過できない重大発言だ。世代間の分断を促しかねない。取り消しを要求したい」―。6日開催の花巻市議会9月定例会の一般質問の場に緊張が走った。発端は新花巻図書館の立地場所にからんだ鹿討康弘議員(はなまき市民クラブ)の質疑応答。上田東一市長が立地の第1候補地としたJR花巻駅前について、「高齢者のためだけの図書館で良いのか。それなら今の図書館で十分。若い人は圧倒的に駅前を希望している」―。議会のライブ中継に見入っていた私が「ついに、本音がポロリか」と思った瞬間、上田市長があわてた様子で手を挙げた。
「私も現在、68歳の老齢世代。だからこそ、将来を見すえて若者を含めたあらゆる世代に開放された図書館を目指したいと思っている。言葉が足りなかったとしたら、訂正したい」―。とってつけたような取り繕い…「語るに落ちるとはこのこと」と眉につばを付けようとしたら、続いて質問に立った櫻井肇議員(共産党花巻市議団)がこの問題発言を引き取った。「不愉快だ」と檄する櫻井議員に対し、上田市長はこう言い放った。「分断だとは決して、思っていない。逆に全世代に開かれた図書館こそが…。表現が不適切だとしたら、お詫びをしたいが、取り消す必要はない」
「なぜ、若者なら駅前なのか。高校生を対象にした説明会がまだ、終わっていない段階でなぜ、若者に特化した議論ができるのか」―。私は図書館問題の核心から外れた、質疑応答の当事者双方のこの不毛な論議にイライラしていた。いわゆる、統計学上の原則を無視した「アンケ−ト“捏造”疑惑」(11月24日付当ブログ)…恣意的に作為された“民意”の実相に怖気(おぞけ)が走っていたからである。土台、仮に駅を利用する高校生に限ってみても日中は学校で授業を受けているではないか。活字離れが進んでいる若者世代を引き寄せるための図書館論議こそが急がれるべきではないのか。
「JR花巻駅橋上化の見返りにJR側が土地譲渡交渉のテ−ブルにつく」―いわゆる「橋上化と図書館」のワンセット“疑惑”がまたぞろ、頭をもたげてくるゆえんである。その辺の”闇”の部分に切り込んで欲しいと期待したが、質問者はいずれも「木を見て、森を見ず」ーのレベルに終わった。一方で、「万が一、土地交渉が不調に終わった場合はどうなるのか」という櫻井議員の質問に対し、上田市長は苦渋の色を浮かばせながら、こう答えた。「そうなった時には花巻病院跡地になると思う」。少しづつ、素顔が見えてきた。イ−ハト−ブ“図書館戦争”の攻防から目を離せなくなってきた。
「本来、図書館とはどうあるべきなのか。箱物や場所よりも、まずその理念を最優先させるべきではないか」…私のイライラの根っ子にはこの逆さまな議論へのいら立ちがずっと、巣食っている。
(写真は資料を示しながら、“防戦”一方の上田市長=12月6日午後、花巻市議会議場で)
《追記》〜「市民による辛口採点大会」へのご案内
12月5日から7日まで、行われる花巻市議会12月定例会の一般質問を対象にした「市民による辛口採点大会」(「花巻市民の権利を守る会」主催)への入場は下記から。フォ−ムの開設は2月5日午前10時から同15日正午まで。質問一覧は11月29日付当ブログを参照ください。